研究課題/領域番号 |
19K13372
|
研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
澤田 望 駒澤大学, 総合教育研究部, 准教授 (70728146)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | アフリカ / ナイジェリア / メディア / 新聞 / 世界 / 計量テキスト分析 / テキストマイニング / デジタル・ヒューマニティーズ |
研究実績の概要 |
2022年度は、東京大学人文情報学リサーチハブの支援により、定期的に研究手法についての相談を行う機会を得ることができた。その結果、これまで反復的な探索を行ってきたデータ構築作業における不明点の多くが解決し、研究成果の可視化に関する新しい知見を獲得した。分析作業の進展に対するこれらの影響は重大であった。 本年度の成果は主に二つの項目に集約される。第一に、国際会議および国内の研究会にて行われた成果報告である。2022年6月に開催された6th Annual Lagos Studies Association Conferenceにて、ナイジェリア歴史新聞の分析に際して計量テキスト分析ソフトウェアKH Coderを用いる際の適用方法や留意点、初期の分析結果について発表した。2023年1月には、龍谷大学社会科学研究所指定研究「台頭するアフリカ地域大国ナイジェリアの総合的研究」2022年度第3回研究会で、Lagos Observer紙(1882-88)およびLagos Weekly Record紙(1891-1921)に掲載された地域の分析手法について報告した。2023年2月のDH(Digital Humanities)フェス2023では、歴史研究にKH-Coder, MTMineR, Voyant Tools, LIWC等、複数のソフトウェアを併用する際の課題について共有する機会を得た。第二に、2022年11月にイギリスにてオンラインデータベース上に収容されていないLagos Weekly Record紙のマイクロフィルムの複写を行った。この史料収集の際には、バーミンガム大学のカーリン・バーバ教授とケンブリッジ大学のアンソニー・ホプキンズ教授に、イギリス領ナイジェリアで出版された歴史新聞研究の展望について、相談する貴重な機会を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度における研究の進捗状況は、複数の要素を総合的に検討した結果、着実に前進したと評価できる。先ず、分析作業と研究データの可視化に関する定期的な相談の機会を得られる環境が整ったことで知見を大いに深める一助となった。これは具体的な方法論の構築や、データ解析の視点を広げるという意味で貴重な洞察を得る契機となった。さらに、その成果を研究会や国際学術会議で発表し、他の研究者からフィードバックを得られたことも、研究の質的な進展に寄与した。 一方で、全体的な研究期間を鑑みると、その初期段階において、予想を超える時間を分析データの収集と構築に費やすこととなった。この遅延は、新型コロナウイルス感染症拡大による海外での史料収集や学会参加の延期や、ナイジェリア在住のデータ構築作業者とのコミュニケーションが困難となったこと、そして計量テキスト分析の作業手順を最適化する過程での試行錯誤に起因している。その結果、研究計画で予定されていた学会での報告の一部が未実施のままであり、研究成果の活字化も充分な進展を見せていない。全体としての研究進捗は一部遅れているものの、本年度においては研究の重要な基盤を構築することができた。この基盤をもとに、今後の研究活動をさらに深化させ、広範に展開させていく所存である。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、本研究課題の補助事業期間延長手続きを完了し、成果報告の公開を確実に遂行する意向である。2023年度は、これまでの研究進展を反映させつつ、研究手法の精緻化を図り、分析の精度を一層強化することを目指している。 具体的には、研究の対象となるテキストデータとデジタル・ヒューマニティーズの学問分野に対する理解を深め、それに基づいて、複数のテキスト分析ソフトウェアの活用を通じて、詳細で緻密なデータ解析を行うことを目指す。これらの知見を国内外の学術会議で発表することを通じて、多様なフィードバックを得ることが可能となり、更なる研究の洞察を引き出すきかっけとなるだろう。このプロセスを通じて、分析結果を学術論文にまとめ、公表する計画を立てている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画の遂行において、2020年度および2021年度は予想を超える時間を分析データの収集と構築作業に費やした。これは、ナイジェリアの歴史新聞の情報を抽出し、構造化する過程において予想外の課題が生じたことによる。その結果、研究計画に記載した研究成果の報告および成果物の活字化に伴う必要な支出を2022年度までに終えることができなかった。2023年度は、複数の学術会議における報告が既に決定しており、これらの会議参加を通じて、新聞の紙面にあらわれる掲載地域と掲載主題に関する分析結果を共有し、フィードバックを得ることで研究のさらなる深化を図る予定である。 上記に伴い、これまで使用が遅延していた額を適切に支出する計画である。具体的には、学会への参加費や関連する資料作成費等に使用し、更なる研究成果を生み出すための資金として活用する。
|