研究課題/領域番号 |
19K13374
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
森 万佑子 東京女子大学, 現代教養学部, 講師 (30793541)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中華 / 交隣 / 事大 / 朝鮮外交 |
研究実績の概要 |
本研究は、近代朝鮮から見た「交隣」を検討するものである。 今年度は、韓国のソウル大学校奎章閣韓国学研究院が所蔵する朝鮮から天津に派遣された駐津督理通商事務の職務日記を収集し、それらを整理・分析することで、事大の現場である清朝の天津に駐在した駐津督理通商事務の立場から見た「交隣」や「外交」を検討した。天津は、朝鮮と中国の関係でみれば「事大」の現場であり、朝鮮と天津に駐在する外国領事の関係でみれば「交隣」や「外交」の現場であり、まさに「事大」と「交隣」が交錯する場であった。 駐津督理通商事務の職務日記については、1886年3月から1893年3月までの7年にわたる記録を入力、整理、解読した。その結果、朝鮮にとっての事大の相手である中国の天津に派遣された使節が、①天津に駐在する外国領事といかに関わり、そこから何を学び、朝鮮の「外交」に取り入れたのか、②天津で中国と外国の「外交」に基づく「対等」な関係を見聞することにより、それらを朝鮮と中国との「事大」関係にいかに取り入れていくことで「事大」の変容を狙ったのか、という問いが生まれた。この問いは、本研究で掲げた「事大交隣が、なぜ事大と交隣に分岐したのか」という問いへの取り組みと密接に関わってくる。さらに職務日記を7年というまとまった期間、分析したことで、例えば1886年と1893年では、駐津督理通商事務の対外観や津海関道に対する対応に確実に変化がみられた。近代朝鮮の外交を俯瞰することも大事であるが、併せてこの時期に関しては時期を区分し、個別具体的に論じる必要もあると感じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大によって海外への渡航制限が行われ、中国とアメリカへの出張が叶わなかった。そのため当初予定していた、対馬・釜山での調査から対日関係における「交隣」の変容や、ワシントンの旧韓国公使館を訪問してアメリカとの「外交」と「交隣」の相違に関する調査・研究が行えなかった。さらに、天津での駐津公館の跡地調査や資料調査・収集も叶わず、大幅な研究計画の変更が必要になった。 そこで、当初の研究計画の順序を変えて、韓国のソウル大学校奎章閣韓国学研究院が所蔵する朝鮮から天津に派遣された駐津督理通商事務の職務日記の研究に当たり、当該資料の収集・整理・分析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って、国内外での調査が難しくなっている。今後は状況を見極めつつ、工夫を重ね、できる範囲で研究を進めていきたい。まずは、駐津督理通商事務に関する論文をまとめて、発表する。アメリカと朝鮮の「外交」と「交隣」の関係について研究を進めたいが、政府の渡航制限等によってアメリカ出張が叶わなかった場合は、昨年、韓国で李商在の新史料に関する論文が発表されているので、それらの史料を閲覧して分析を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大によって海外渡航制限が発せられ、当初予定していた海外出張が行えなかったため。海外渡航制限が解除された場合は、研究計画に沿って海外旅費に使用し、解除されない場合は、現地調査の代替となるべく海外から書籍・資料を取り寄せる費用に充てる。
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