今年度は、これまで実施してきた研究の成果を第22回日本台湾学会学術大会(2020年5月オンライン開催)にて「1920年代における台湾議会設置請願運動の「民族心理論」」というタイトルで報告した。報告では、台湾議会設置請願運動について、在台日本人記者(今村義夫、柴田廉、宮川次郎、安藤盛)の台湾人民族性についての認識に潜む特徴、すなわち従来の中国人認識からの「縦の継承」、そしてル・ボンの「民族心理論」への「横の受容」を指摘した。また、この問題に関する認識において異彩を放つ二人の記者(唐澤信夫、泉風浪)の言論をも検討した。最後に蔡培火を例として、このような視線に晒されていた台湾人知識人の対応を考察した。 報告に対して、①各言説を同時代台湾・中国・日本の時局変化などとの関連において考察するなど、もっと有機的な論述にする必要がある。②日本、そして在台日本人記者におけるル・ボンの「民族心理学」の受容の様相への考察・分析が不十分であるなどの問題点が指摘された。助成終了後も、今後の課題として引き続き検討していきたい。 なお、2021年度になるが、本研究課題の成果を2021年5月に台湾・東呉大学のシンポジウムでも書面討論という形式で発表する予定である。これら口頭報告で得た意見に基づいて、研究論文として年度内に正式に学術誌に投稿すると考えている。
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