研究課題/領域番号 |
19K13377
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研究機関 | 多摩大学 |
研究代表者 |
水盛 涼一 多摩大学, 経営情報学部, 准教授 (20645816)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 官僚制度 / 人事査定 / 旗人社会 / 少数民族政策 / 近代化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中国の近代を当時の“支配民族”出身の一般的官僚の動態から観察することにある。“支配民族”とは主に満洲族やモンゴル族、および興隆期に政権へ助力した一部の漢族を指す。彼らは清朝の建国に功績を挙げ、官僚の重要な供給源となった。しかも彼らはしばしば中央や地方の枢要な地位に在って政治動向に影響を与えたのである。それにもかかわらず、彼ら少数民族官僚の実態は長らく曖昧であった。そこで、新発見にかかる清朝後期の旗人官僚名簿の整理と分析、新たに公開された彼ら支配民族の作成した文書の内容分析と送信側・受信側の関係性調査といった作業を通して解明を目指したものである。 そこで、今次2019年度には『近代史所蔵清代名人稿本抄本』第三輯(全140冊、2017年1月、日本に初めて将来)について第一次配本を得て巴岳特氏錫良(1853年~1917年)の分析を開始、また『八旗文獻集成』第一輯(全8冊、遼海出版社、2015年12月、関西大学のみ所蔵)および第二輯(全30冊 2018年12月、日本に初めて将来)を入手し並行して清朝後期における彼らの行動を解析した。 また、その間には香港(中国の特別行政区)や仙台(宮城県)の図書館を訪問し、支配民族やその周囲にかかわる資料の捜索閲覧を行うことができた。 そして東北史学会2019年度大会(2019年10月6日)では「道咸同光書禁政策略論稿──清朝後期における禁書令の変容と自主規制をめぐって」として、そして第十屆中國古文獻與傳統文化國際學術研討會(2019年10月12日)では「“自惹而亡”? ──從文獻及档案看太平天國失敗探源新視野」として、支配民族の存在にかかわる出版規制や、政権への反抗とその鎮圧について研究成果を公開することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料の捜索読解は思いの外に進展し、幾度かの発表を行うことができるほどに材料を集めることができた。この発表数、またその内容からすれば「当初の計画以上に進展している」といえる。 しかし世界各地の図書館での資料収集は、鋭意作成を進めているとはいえ、対象となる資料の膨大な内容からすれば、未だ端緒についたばかりに過ぎない。また2019年度最終四半期となる2020年1月から3月までは新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)による感染(COVID-19)が拡大し国外はおろか国内の移動も困難となってしまった。それまでに入手した資料の整理や官僚データベースの拡充に努めることは当然として、今後の活動の展望もかんがみ、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
さきにも述べたように、資料の捜索読解は思いの外に進展し、幾度かの発表を行うことができるほどに材料を集めることができた。しかし、2019年度最終四半期となる2020年1月から3月までは新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)による感染(COVID-19)が拡大し国外はおろか国内の移動も困難となってしまった。これは2020年度も同様であろう。幸運にも、中国側環境の寛解により、4月5月になお日本未将来の書籍が続々と到着している。それまでに入手した資料の整理や官僚データベースの拡充に努めることは当然として、なお新規入手の未公開資料や臺灣故宮博物院資料(申請により研究者のみデジタル閲覧可能)の分析を通して、今までに注目されていなかった清朝後期における支配民族の政治につき研究を推進する予定である。
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