研究課題/領域番号 |
19K13379
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
塩野崎 信也 龍谷大学, 文学部, 講師 (70801421)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アゼルバイジャン / コーカサス / ロシア帝国 / 裁判制度 / ペルシア語文化圏 |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナの影響で予定していた海外での史料・文献調査ができなかった。その結果、入手予定であった史料の多くが手許にない状況となり、あらたな研究を開始することが困難となった。これには、2019年度3月に予定していたドイツでの文献調査が、同じく新型コロナによって中止となったことも影響している。 そのようななか、すでに入手していた史料や日本で入手できる史料を利用することで、遂行可能な範囲で研究を進めた。そのひとつが法令集や法廷史料の分析を通じた民事裁判の復元であり、その成果を第14回近代中央ユーラシア比較法制度史研究会(2020年6月27日、オンラインにて開催)にて「ロシア帝政期南東コーカサスの離婚裁判:2度結婚した後に2度離婚した未婚女性の事例」という題目で発表した。また、発表内容に基づいた論文を執筆し、学術雑誌に投稿、掲載の内定をもらっている。さらには、裁判の手続き、特に上訴制度の運用実態に焦点を当てた研究を遂行し、その成果をまとめた論考「離婚裁判の上訴とエリザヴェートポリ県メジュリスの不適切な事務処理」(『龍谷史壇』151/152、29-49頁、2021年3月)を発表した。 また、当初の予定にはなかった研究課題として、都市の形成と「イラン性」との関連に焦点を当てた研究を開始した。具体的には、現在のアゼルバイジャン共和国中西部の都市ギャンジャを対象に、その歴史的な発展の経緯、特に16世紀末~17世紀初頭の都市の移転の過程を復元し、そこから見える「イラン性」との関連を考察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」にも記したとおり、新型コロナの影響で海外における史料・文献の収集が不可能となったことが進捗に甚大な悪影響を及ぼした。特に本研究は、現地の文書館等に所蔵されているペルシア語や古アゼルバイジャン語、あるいはロシア語の文書史料を分析する性格のもので、それらの文書史料の大半は現地に足を伸ばさねば見ることのできないものである。その結果、新たな史料に基づいた研究は、全く不可能となった。 一方で、既に入手していた史料を再検討・再解釈することで新たな研究を行うこともできた。また、文書史料を用いず、刊行された年代記などの史料のみを用いた研究も積極的に進めた。都市の形成に関する研究は、まさにそのひとつである。 以上のように、当初の研究計画はほぼ遂行できない状況となった一方で、研究計画にはない新たな関連テーマの研究を進めており、その成果も順調に現れているところである。そのため、全体の進捗状況としては「やや遅れている」といった程度に自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針に関しては、新型コロナの状況の推移に大きく影響されるため、確定的なことは記すことができない。状況が好転した場合には、2022年2月から3月にかけてアゼルバイジャン共和国、およびロシア共和国での文献調査を行う。 海外での文献調査が行えなかった場合は、現状手許にある文書史料の再検討をさらに進める。また宗教学校に関する文書や、宗務管理局の採用試験に関する文書は、これまで具体的な考察の対象とはしてこなかったため、これらに関連した研究を進めたい。 並行して、南東コーカサスで書かれたペルシア語写本史料の分析を行う研究も進めていく。これは海外での文献調査の有無にかかわらず遂行可能な研究テーマである。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響により、海外出張が不可能となったため。 これらの差額は、新型コロナの状況が好転し、海外出張が再開できるようなることを見越して、旅費として利用する予定である。
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