研究課題/領域番号 |
19K13379
|
研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
塩野崎 信也 龍谷大学, 文学部, 准教授 (70801421)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | アゼルバイジャン / ロシア帝国 / 南東コーカサス / ペルシア語文化圏 / 民族意識 |
研究実績の概要 |
今年度は3年ぶりに海外出張が可能となったため、2023年2月から3月にかけて、アゼルバイジャン共和国とドイツ連邦共和国における文献調査を行った。このうち、アゼルバイジャンにおいては、国立歴史文書館において19世紀の宗教共同体と裁判制度に関する文書を閲覧する予定であったが、「現在までの進捗状況」欄に記す事情により、文書館を利用することができなかった。そこで、同国においては、書店における文献調査・資料収集に目的を切り替え、最新の研究状況の把握に努めた。ドイツ連邦共和国においては、フランクフルト市の国立図書館において文献調査を行い、19世紀のペルシア語史料の校訂本や、アゼルバイジャンの民族形成に関する研究書など、日本ではアクセスできない様々な資料を閲覧し、それらのコピーを入手することが出来た。 また、先年度に引き続き、既に手許にある文書史料などを用いて、19世紀当時の婚姻制度や離婚裁判に関する研究を遂行した。いくつかの文書を分析し、それらの校訂・翻訳などを進めることが出来たが、具体的な研究成果としてまとめて発表することはできていない。 ロシア帝政期南東コーカサスの諸制度に関しては、ヴォルガ・ウラル地域や中央アジア地域を対象に同様の研究を行っている研究者と、各種研究会などを通じて交流し、情報交換を行った。とりわけ、帝政期の中央アジアにおいて最も基本的な法律であった「トルキスタン統治規程」を翻訳する研究会は、本研究課題の遂行にあたって非常に大きな意味があった。 また、2023年3月には「第21回中央アジア古文書研究セミナー」の講師を務め、19世紀の南東コーカサスで書かれたペルシア語や古アゼルバイジャン語の文書を読解するための技術を、他の研究者に伝えることが出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は現地アゼルバイジャンで保管されている文書史料の分析に負う部分が大きいが、新型コロナの影響によって海外での調査がままならず、全体の予定が大きく狂ってしまう結果となった。 今年度はアゼルバイジャン国立歴史文書館における調査を行う予定であったが、文書館側の利用許可が下りず、結局調査は行えずじまいであった。同文書館を外国人が利用する際には、アゼルバイジャン外務省の許可が必要であり、報告者も事前に書類を提出していた。しかしながら、外務省の担当者がこの書類を放置していたことが、アゼルバイジャンに渡航して文書館を訪問した際に明らかとなった。急ぎ手続きを進めるようアゼルバイジャン外務省に要請したが、結局のところ、報告者のアゼルバイジャン滞在中に許可が下りることはなかった。 上述の事情により、新たな文書を用いた研究は、いまだに遂行できていない。一方で、既に報告者の手許にあった文書史料や、その他の各種史料を利用することで一定の成果をあげることはできている。1年間の延長もあり、今年度末にはある程度の結論に至ることが可能であると見込まれ、全体として「やや遅れている」という自己評価となる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は8月から9月にかけてアゼルバイジャンに渡航し、国立歴史文書館での史料調査を遂行する予定である。アゼルバイジャン外務省には手続きをきちんと進めているかどうかを細かめに確認し、現地に到着したものの許可が下りていなかった、ということがないように注意したい。文書館においては、19世紀の宗教政策、裁判制度に関する文書を閲覧する予定である。これまでは大きな制度改革のあった1872年よりも後年の文書を主に調査してきたが、今回はそれ以前のものを中心的に調査する予定である。 そこで入手した文書は帰国後に分析し、1872年以前と以後でどのような変化があったのか、あるいは変化しなかったものは何かを検討したい。そこから、現地住民の自己認識のあり方に生じた変化などを探っていく。 また、ロシア帝政期の中央アジアに関する研究会などにも引き続き参加し、この地域との比較をする研究なども行っていく予定である。 これらの成果は、11月前後に開催されるいずれかの学会において口頭発表する。また、その成果も踏まえて論文を執筆し、いずれかの学会誌に投稿する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究期間を1年間延長したため。 8月から9月に予定しているアゼルバイジャン出張に使用する予定。
|