本研究は、20世紀前半のインドネシア(オランダ領東インド)におけるイスラーム運動について、アラブ地域との関係に着目して考察するものである。具体的な研究内容としては、①伝統派ムスリム、②カイロへの留学という2つのトピックを取り上げる。 2022年度は海外での資料調査を再開し、2022年8月から9月にオランダのライデンとハーグ、トルコのイスタンブルで調査に渡航した。オランダではライデンのライデン大学図書館とハーグの国立公文書館でカイロのインドネシア人留学生に関するオランダ植民地政庁の報告書を、イスタンブルではオランダ領東インドとの外交に関するオスマン朝の文書を調べた。 研究成果の発表としては、Reconciling Islam with Indonesian Nationalism: Acceptance of the Arab Influence during the Dutch Colonial Periodという論文をDie Welt des Islamsに投稿し、現在査読中である。この論文は、オランダ植民地末期である1920年代から42年までを対象に、インドネシアのイスラーム運動内でのナショナリズムをめぐる見解の相違と変遷について、アラブ地域からもたらされた影響に焦点を当てながら検討した。その中で、カイロ留学を経験したインドネシアのムスリムが果たした思想の仲介者としての役割や伝統派のムスリムによるアラブ地域のイスラーム改革思想の受容について指摘した。 研究期間全体を通じて実施した研究の概要は以下のとおりである。海外での資料調査は、2019年度にオランダ、2022年度にオランダとトルコで行った。成果の発表としては、日本での口頭発表を2回行い、英語論文が1本、日本語論文が2本が掲載された。さらに英語論文1本が査読中である。
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