研究課題/領域番号 |
19K13381
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小澤 一郎 立命館大学, 文学部, 准教授 (50817210)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アフガン人 / 武器交易 / フロンティア / 英領インド / イラン / アフガニスタン / ペルシア湾 / バルーチ人 |
研究実績の概要 |
2021年度は、これまでに収集した史資料の読解・検討の成果として、2020年度に行った学会報告の内容の一部を発展させた論文「海を渡るアフガン人:一九・二〇世紀転換期のオマーン湾沿岸地域におけるアフガン人の交易活動」(『立命館史学』41号)として公刊した。この論文では、オマーン湾におけるアフガン人の交易目的での渡海という、これまでにほとんど注目されてこなかった現象を扱い、それをインド洋海上交易の文脈に位置付けてその歴史的意義を検討した。また、アフガン人の交易活動と関連するイギリス側の交易規制政策については、「「現地権力」の尊重:ペルシア湾におけるイギリスの反武器交易運動の論理」として、国際ワークショップ「海洋の縄張り化の近代」にて報告した。この報告では、ペルシア湾におけるイギリスの武器交易規制がいかなる論理のもとに行われていたかを検討し、ペルシア湾沿岸諸政権の主体性を尊重するという口実の下に、武器交易規制と規制を通じたイギリスのペルシア湾支配の強化が正当化されていたことを指摘した。 上記の研究成果の公表と並行して、収集済みの史資料の読解と検討を進めた。今年度は新たに、アフガン人の武器交易の主な舞台となったマクラーン地方において、現地のバルーチ人がいかに交易に関与していたのかという問題を検討対象とした。これまでに、バルーチ人のアフガン人の武器交易活動に対する対応の多様性と、その社会経済的背景、イギリスの交易規制による地域の変化などについて考察を行っている。この成果は2022年5月の学会報告にて公表し、その後論文化する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
史料収集の面では、新型コロナウイルスの感染拡大により海外(イギリス・イラン)での史料調査が不可能となり、またイギリス側の史料を多く所蔵する大英図書館でも複写の依頼を受け付けていないため、新規に史料を収集することが不可能になった。また、2021年度から立命館大学に着任した関係で、授業準備などの業務に時間が割かれて研究への十分な時間が取れなかったことも影響している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2021年度に進めてきたバルーチ人に関する問題を2022年5月開催の国内の学会で報告し、またイギリスの交易規制政策については、2021年度の国際ワークショップの成果をもとに、2022年6月に開催予定の国際会議で報告する(成果は論文集として刊行予定)。あわせて、これまでに行ってきたアフガン人・バルーチ人に関する研究成果の論文化を進める。さらに、状況が許せば夏ごろにイギリスでの史料調査を行い、これまでの調査結果を補強したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大が継続しており、2021年度に予定していた海外調査および海外での学会発表が行えず、また大英図書館からの複写物取り寄せも出来なかったため。今年度は水際対策の緩和により、これまで延期されてきた海外調査と海外での学会発表を行える可能性があり、また大英図書館の複写受け付け再開の見込みもあるため、これらの用途に使用する予定である。
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