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2019 年度 実施状況報告書

古代ローマの庭園と「フォーマル・ガーデン」の起源に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K13384
研究機関名古屋大学

研究代表者

川本 悠紀子  名古屋大学, 高等研究院(文), YLC特任助教 (70780881)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード古代ローマの庭園 / 西洋古代史 / 庭園史 / ローマ / Roman Gardens / Horti Romani / Pompeii / Classics
研究実績の概要

「フォーマル・ガーデン」とは、西洋の庭園でしばしば見られる左右対称に植物を配置したり、また草木が成形されたりした庭園のことを指す。この「フォーマル・ガーデン」の起源は、古代ローマの庭園にあるとの考えがルネサンス期以降支配的であったが、二十世紀後半に行われた古代ローマ時代の庭園の発掘の成果が契機となり、これまでの認識が改められつつある。「フォーマル・ガーデン」の起源が古代ローマの庭園にあると考えられるようになった経緯を探るべく、2019年度には英国、ドイツ、イタリアで資料調査をおこなった。
大英図書館では、16-17世紀に出版された庭園に関する書物の調査を行い、この時代に出版された史料が参照した古代ローマの文献がどのようなものであったのかを明らかにすることができた。ドイツのThesaurus Linguae Latinaeでは、以前から継続して行っている庭園描写が確認できるラテン語史料の調査を遂行し、中でも庭園に配置された物に関する史料上での言及を収集した。また、ローマにあるArchivio Centrale dello StatoやBritish School at Rome では、19世紀末に行われたポンペイの庭園発掘の記録を調査した。さらに、ポンペイで庭園が発掘された当時に描かれた水彩画のコレクションを、ローマのGalleria nazionale d’arte modernae e contemporaneaにおいて調査することができた。これらの資料調査に加えて、ポンペイの庭園発掘調査(Casa della Regina Carolina)にも参加し、どのように庭園が発掘されるのかを実地で学ぶことができた。この発掘調査により、発掘報告書の記録ではわかりにくかった点についても理解できるようになったと考える。
これらの研究・発掘実績に加え、古代ローマの庭園に関する学会発表を国内外で行うことができた。また、これまでの研究内容の一部を執筆し(「ポンペイにおける庭園の発掘とその復元」)、『文化遺産と〈復元学〉』に収録された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、文献史料の調査、発掘報告書ならびに関連した資料の調査、壁画・遺構の調査、そして発掘調査によって構成されている。文献研究については、古代ローマ時代に書かれた庭園に関する言及はほぼ集めることが出来たと考えており、現在はテオプラストスの『植物誌』と植物に関連する古代ローマの史料との関連性について検討しつつある。他方、ルネサンス期以降に庭園について著された書物は多く、その全てを網羅することはできていないが、英国とイタリアで16世紀頃までに刊行されたものの多くについては検証することができた。
発掘報告書と発掘に関連する資料の中には、デジタル化されておらず図書館や文書間での調査をする必要があるものも多い。ローマでは、研究に必要な資料の調査を実施することができた。他方、壁画・遺構の調査は、新型コロナウィルス感染症拡大に伴い、調査を予定していた調査地(Villa di Livia (Prima Porta)など)に行くことが出来なかったため、調査することができなかった。
発掘調査はコーネル大学が行っている発掘調査に専門家として参加している。発掘を通して、ウェスウィウス山が噴火した79年の地表がいかなる特徴を持つのか、また植物の痕跡が出てくる際の土の状況などを確認することができた。先にも述べた通り、この経験は発掘報告の理解に役立つであろう。この発掘プロジェクトのチームには今後も参加する予定であり、文献史料に基づく研究と発掘に基づく調査研究との融合がこれからも期待される。

今後の研究の推進方策

当初の研究計画では、「ルネサンス期以降に書かれた古代ローマの資料の注釈書に関する研究」ならびに「古代ローマ時代に書かれた庭園に関する史料の再検証」を行う予定であった。後者についてはその調査がほぼ完了しているため、今後はテオプラストスの『植物誌』についてその研究の範疇を広げる予定である。一方、ルネサンス期以降に書かれた注釈書については、2019年度に調査を行ったが、まだ調査が不十分であると感じている。研究を進めるためには、海外の図書館での資料収集が必要になってくるが、これについては新型コロナウィルス感染症拡大に伴い見通しがまだ立たない。海外での調査が可能になり次第遂行したい。
これらに加えて、研究成果を公表していきたいと考えており、19世紀後半に行われたポンペイの庭園発掘についての英語論文を雑誌に投稿する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (2件)

  • [国際共同研究] Cornell University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Cornell University
  • [国際共同研究] University of Reading(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University of Reading
  • [国際共同研究] Parco archeologico di Pompei/British School at Rome(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      Parco archeologico di Pompei/British School at Rome
  • [学会発表] Roman Gardens and Medicinal Plants2019

    • 著者名/発表者名
      Yukiko Kawamoto
    • 学会等名
      Kyunghee University, Research Seminar at the HK -Institute for Integrated Medical Humanities
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 古代ローマの庭園とその植生:史料・壁画・遺構の見地から2019

    • 著者名/発表者名
      川本悠紀子
    • 学会等名
      上智大学史学会大会
  • [学会発表] Hellenization: Responses of Scipio Africanus and Cato the Elder2019

    • 著者名/発表者名
      Yukiko Kawamoto
    • 学会等名
      The 2nd International Conference of Reconciliation and Coexistence in Contact Zones [RCCZ]
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] Paesaggi Domestici. L'esperienza della natura nelle case e nelle ville romane Pompei, Ercolano e l'area vesuviana2020

    • 著者名/発表者名
      Anna Anguissola, Marialaura Iadanza, Riccardo Olivito
    • 総ページ数
      254
    • 出版者
      L'ERMA di Bretschneider
  • [図書] 文化遺産と〈復元学〉2019

    • 著者名/発表者名
      海野 聡
    • 総ページ数
      344
    • 出版者
      吉川弘文館
    • ISBN
      978-4642016629

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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