研究課題/領域番号 |
19K13387
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
雪村 加世子 大阪産業大学, 経済学部, 准教授 (60735116)
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研究期間 (年度) |
2020-02-01 – 2024-03-31
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キーワード | アイルランド史 / ブリテン諸島史 / 海軍史 / 海事史 |
研究実績の概要 |
第二次英仏百年戦争期(1692~1815年)のイギリスにおける海軍組織の発展と活動領域の拡大という現象についてのアイルランドの要素を含めた再解釈が国内外で目指される中、本研究計画は1691~1758年にかけてアイルランド総督府がイギリス海軍省に送った書簡を分析することで、アイルランド統治の担当者らがイギリス全体の海軍政策に対していかなる見解を持ち、いまだ発展途上にあったイギリス海軍行政をアイルランド方面においていかに補完しえたのかという問題を明らかにする4年間の研究プロジェクトである。 研究計画2年目に当たる2020年度は、2019年度の研究代表者の妊娠・出産の影響で遅れていた分の史料読解を行い、『西洋史学』に修正のうえ採用が決まっている日本語論文の再投稿を完了させ、6月には第8回国際海事史会議(於ポルトガル)で口頭報告を行う予定であった。しかしながら「新型コロナウイルス感染症流行」と「研究代表者の他大学経済学部のテニュア研究職への移動」という2つの予想外の出来事が重なり、研究計画の大幅な変更を余儀なくされた。 まずヨーロッパにおける新型コロナウイルス感染症流行のために、予定していたポルトガルでの国際学会での口頭報告がなくなり、ポーツマス大学と神戸大学との共同研究プロジェクトも停滞中である。移動先の所属機関では教務委員に任命され、保育園登園自粛期間もあり、予定外の多大なエフォートを研究から教育・学務・育児に振り分けざるを得なかった。このため2年目に1691~1758年の総督府文書の史料を読み終わる予定が、1690年代までしか完了せず、日本語論文の修正と再投稿も完了できなかった。 2020年度は新所属機関研究室の環境整備を行い、最新の研究状況把握のための英語・日本語文献を購入・読解した。また、本研究計画の成果は新所属機関の学部生・院生向け講義を通じて、学生に向けて還元された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度の出産の影響、新型コロナウイルス感染症流行、所属機関移動、緊急事態宣言による保育園登園自粛が重なり、2020年度は計画の通りに研究が進まなかった。 具体的には研究計画2年目に予定していた国内外への移動を伴う学会参加・共同学術研究・資料調査がすべて延期・停止となってしまい、再開の時期もいまだ不明瞭である。また新所属機関では、自身が新たに担当する授業のオンライン配信化準備に加えて、教務委員として学部全体の教育のコロナ対応を計画・実行・管理し、学生からの問い合わせ等の対応に当たったため、研究に割り当てられるエフォートが大幅に減ってしまった。加えて、第1回目の緊急事態宣言の際に保育圏の登園自粛が行われたために子供が自宅保育となり、本来研究に充てられるはずであった時間がなくなってしまった。これにより2年目に完了する予定の史料読解が終わらず、日本語論文の修正と再投稿も完了できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前述の事情により研究の進捗が遅れているため、本来2年目に行う予定であった史料分析と論文執筆・投稿を3年目に完了させ、3年目に行う予定であった関連史料(ダニエル・ペック文書、ロウザー家文書)と結び付けた検討作業は4年目の前半期に行うよう研究計画を変更する。 具体的には、3年目の間に本計画の中心となる史料であるアイルランド総督府文書読解を完了させ、分析を行う。これと並行して『西洋史学』への論文再投稿も完了させ、次の英語論文の作成に取り掛かる。3年目後半には国内の学会あるいはオンラインで開催される海外の研究会・学会でアイルランド総督府文書の分析結果の中間報告的な口頭報告ができるように調整中である。 研究計画通り、最終年度(2022年度)には本研究の最終成果報告を行う予定だが、第8回国際海事史会議(於ポルトガル)が延期の結果2022年6月に開催予定のため、この国際会議での研究成果報告が一つの目標である。その他にも国内外のセミナー・国際学会に申し込む予定である。これらの学会報告で他の研究者から得られたフィードバックを生かして、英語論文を1本執筆開始する。 2年目に使用する予定であった研究費は3年目以降に繰り越し、学会出張費等として使用する予定である。ただし、新型コロナウイルス感染症の流行状況次第で、上記の研究計画は柔軟に変更される。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年目に予定していた海外出張が新型コロナウイルス感染症の世界的流行により延期となったため、これに使用するはずであった旅費が次年度に繰り越されている。新型コロナウイルス感染症の流行が終息し次第、資料調査ならびに国際学会発表(第8回国際海事史会議(ポルトガル)等)の旅費として使用する予定である。
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