研究課題/領域番号 |
19K13388
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤澤 潤 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (90801100)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ソ連史 / 冷戦史 / コメコン |
研究実績の概要 |
当初の研究計画では、令和3年度には、モスクワ、ベルリン、ワルシャワ等の文書館で、1980年代末から1991年までのコメコンに関するアーカイヴ史料調査を進め、その成果を国際査読雑誌に投降する予定であった。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、海外渡航が事実上不可能な状況が続いたため、この当初計画はほぼ完全に変更せざるをえなくなった。 本研究に必要なアーカイヴ調査をほとんど行えなかったことから、ドイツ連邦文書館のオンラインデータベース、ドイツ語、ロシア語、ポーランド語、チェコ語などの史料集、回想録などを集中的に分析した。その結果、1989年のベルリンの壁崩壊後、ソ連と東欧諸国との間で、域内経済協力体制のあり方をめぐって、1年以上にわたって協議が継続されていたことを確認できた。多くの中東欧諸国は欧州共同体(EC)への即時加盟を望んでいたが、EC側が中東欧諸国の加盟に慎重であったため、近い将来にこの目標が達成される見込みは低かった。そのため、ポーランドやチェコスロヴァキアのような中欧諸国でさえも過渡期的に域内経済協力体制を維持することに前向きであり、一度は全加盟国がコメコン後継組織の設立に同意したのである。 これは、1989年の体制転換後にコメコンは自然消滅したとする通説的解釈に修正を迫る重要な研究成果であることから、第10回国際中東欧研究国際協議会世界大会や国際シンポジウムで口頭報告を行ったほか、国際査読雑誌に原稿を提出した(現在査読審査中)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、当初計画の大部分は変更を余儀なくされた。特に大きな打撃となったのが、前年度から続く新型コロナウィルスの感染拡大であり、当初予定されていたアーカイヴ調査はほぼ不可能となった。そのため、本研究の円滑な遂行は著しく困難になったが、幸いにも重要な史料集が刊行されたほか、ドイツ連邦文書館などが一部の史料をオンライン公開したため、これらの史料を閲覧・分析することで、ある程度研究を進めることができた。また、これらの史料を、一昨年度の史料調査で収集した史料と照合することで、一定の研究成果をあげることができた。8月には、第10回国際中東欧研究国際協議会世界大会がオンラインで開催されたため、これに参加して研究をさらに進めることができた。 このように、史料調査は中止となり、重要な国際学会の一部も延期になるなど、本年度の研究の進捗状況は計画よりも遅れていると言わざるを得ない。しかしながら、このような状況でも、すでに収集済みの史料をもとにオンライン国際シンポジウムで報告を行い、その成果を査読論文として投稿することができた。以上より、新型コロナウィルスの感染拡大にもかかわらず、研究の遅れは最小限度に抑えることができたと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、できる限り早急にモスクワ、ワルシャワ、ベルリンにおける史料収集を再開したいが、新型コロナウィルスをめぐる状況は著しく不透明であり、研究遂行のために必要不可欠な海外出張を行えるめどはたっていない。そのため、現状では、すでに収集済みの史料やオンラインデータベース、刊行史料集、新聞・雑誌、回想録など、日本にいながら入手可能な史料や文献の収集・分析を進めるとともに、Zoomなどのオンラインツールを活用して、国際学会等での報告を精力的に行っていきたい。そのうえで、海外への渡航が再び可能となり次第、文書館史料の調査・収集を再開し、その成果を海外の査読雑誌に投稿する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、研究費の大部分をモスクワ、ワルシャワ、ベルリンなどにおける史料調査や国際学会への参加などの海外渡航費用に充てる予定であった。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、すべての海外出張が中止となったため、139万7596円の次年度使用額が生じることとなった。 令和4年度には、国内外への出張も再開できるようになると想定されることから、令和3年度に中止せざるをえなくなった史料調査を実施する予定である。その場合、次年度使用額の大部分は出張旅費ならびに関連文献・史料集購入費に充てられる。 もし万が一、令和4年度も海外出張が困難である場合は、関連する英独露語文献や史料集の収集に加えて、マイクロフィルム史料の取り寄せなどを進める予定である。そのうえで、フィンランドの研究協力者とともに国際共著書の執筆に向けた準備を進める。
|