研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、ゴルバチョフによるコメコン改革の試みとそれに対する東欧諸国の反応を分析することで、1980年代後半のコメコン改革が社会主義圏の解体ならびに冷戦の終焉過程に与えた影響を実証的に解明することにあった。 本来は、2019年度から2021年度の3年間で完了させる予定であったが、新型コロナウィルスの感染拡大ならびに2022年にはじまったウクライナ戦争の影響で、本研究を進めるために必要な海外での史料調査が十分に行えず、研究期間を2023年度まで延長せざるを得なかった。それでも、2019年度にモスクワの文書館で2度にわたる史料収集を行えたほか、不足する史料を補うために、2023年度はロシアや欧米で刊行された資料集やオンライン・データベースの活用に加えて、北海道大学スラヴ・ユーラシア研究センターなどで史料収集を行い、本課題に関連する研究を進めた。 その成果は、国際学会やワークショップ等で報告したほか、藤澤潤「ソ連のコメコン改革構想とその挫折:1990―91年の域内交渉過程を中心に」『史学雑誌』第131編1号、2021年、1-35頁、ならびに、Jun Fujisawa, “Soviet Aid and the Mongolian Economy: The Global South in CMEA, 1962-1991”, Cold War History (2023), pp. 1-22として国内外の査読雑誌に投稿した。前者の論文では、従来は1989年の東欧激動後に自然消滅したとみなされていたコメコンの最終局面を、中欧諸国に加えてキューバなどの非欧州加盟国の動向に注目しつつ実証的に分析した。後者の論文では、従来のコメコン研究ではほぼ完全に見落とされていたモンゴルの役割について、ロシアとドイツの文書館史料をもとに解明した。
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