研究課題/領域番号 |
19K13389
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
村田 光司 筑波大学, 図書館情報メディア系, 助教 (20793558)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ビザンツ帝国 / ユーラシア / 外交史 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
2020年度はコロナ禍の最中であり、海外での調査・発表計画を全面的に見直し、文献史料の検討に集中した。昨年度から進めている13世紀外交関連記録はおおよその整理を終え、事実解釈や編年について(再)検討すべき点をいくつか見出すことができた。とりわけ豊かな情報源であるゲオルギオス・アクロポリテスの『歴史』については、既存の諸研究による到達点を踏まえつつ、今後の作業のため日本語訳も進めている。 本年度の成果としては、ニケーア帝国とホーエンシュタウフェン朝の婚姻関係の直接のきっかけとなった、ニケーア皇妃エイレネ・ラスカリナの死去年代にまつわる編年、および外交政策の再検討が挙げられる。従来、エイレネは1239年に死去し、妻を失った夫であるニケーア皇帝ヨアンネス3世は、臣民の感情に配慮し少し時期をおいてからホーエンシュタウフェン朝皇帝家の女性を再婚相手として迎えた(1241年前半頃)とされていたが、エイレネ死亡時期の根拠となる史料記述(天文記録)を、天文学者との協力によって再解釈し、彼女が実際には1240年に亡くなった可能性が高いこと、それに伴って性急に再婚交渉が進められたことを論証した(PASJ 73/1)。 また作業中のため詳細は控えるが、1230-40年代のニケーア政権と西側勢力との外交交渉の解釈については、従来の研究では説明できない矛盾があり、改めて関連するラテン語、ギリシア語、ペルシア語史料を見直しつつ、整合的な解釈を見出しつつある。とりわけ核となるアクロポリテス『歴史』に関する新しい読み方を提案することが本論の大きな成果となるだろう。これについては、2019年度に行った学会発表の内容とあわせ、2021年度中に個別論文として投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外での調査・発表はできていないが、具体的な成果が刊行されつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
作業中の論題についてはできる限り早急に完成にまでもっていきたい。2021年度中に西側諸勢力との外交交渉については一定の見通しを得られるようにし、東側諸勢力との交渉を検討する段階に移りたい。当初予定していた海外での学会発表は大幅に縮小ないし断念せざるを得ないが、既存の研究者ネットワークに頼りつつ適宜助言・批判をお願いしてく次第である。また、コロナ禍が一段落した時点で、海外調査を徐々に再開していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によって当初予定していた海外出張ができなかったため、旅費として予定していた額をそのまま次年度に引き継ぐこととした。当該出張は、状況が許し次第行う予定である。
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