研究課題/領域番号 |
19K13390
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
坂野 正則 上智大学, 文学部, 教授 (90613406)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナント王令 / 宗派国家 / カトリックとプロテスタント / 17世紀 / フランス / 人物誌 / 宗教モニュメント |
研究実績の概要 |
研究年度三年目にあたる本年度も、研究の目的で示した宗派越境的視点と学際的アプローチに基づきながら、フランス絶対王政期における宗教と社会とのダイナミズムを解明するような研究活動が実践できたと考えている。 とくに本年度は、本研究が中心に据えている「ナント王令体制」の時期のその後への連続性に着目しながら研究をおこなった。中心となって取り組んだのは、18世紀にマルセイユ司教を務めたアンリ・ド・ベルザンスの人物誌研究であった。彼は、「ナント王令体制」の時期にカルヴァン派からカトリックへ改宗した高位聖職者であり、マルセイユでペスト災禍に直面した。その対応の中から、彼自身の心性を読み解く研究をおこなった。ペスト禍が都市を襲う中で、それ以前から社会内部に沈潜していたカトリックの内部対立が顕在化した要因の一つとして、彼のアイデンティティが関係したことを明らかにした。同時に、社会的心性の動向と都市空間との関連性についても知見を発展させることが可能となった。その成果は、『上智ヨーロッパ研究』13号に特集論文として掲載された。 一方、本年度、「宗教モニュメント論研究会」を立ち上げ、建築史家、思想史家、美術史家の参加を得ながら、定期的に研究発表を行っている。こうした活動を通じて、若手研究者を含めた学際的人脈の基盤が構築されつつある。これらの一連の研究活動の継続的実施は、本研究を総括していくうえで有益に働くのみならず、次の研究課題の萌芽を育てることにも貢献している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」でも述べたように、本研究の柱である宗派越境的視点からの分析については、本年度も前年度に引き続き、研究成果を公表することができた。また、学際的アプローチの深化についても、研究会の立ち上げなどを通じて、着実に進めている。 その一方、この2年間のCovid-19の感染症拡大により、海外渡航が極めて厳しく制限されてきている。その結果、海外での史料調査が進んでいない。しかし、この点については、研究期間の延長措置を通じて、もう1年残された研究期間において挽回してきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は最終年度の1年間で、これまでの研究の総括と統合の作業を行う。合わせて、これまで積み残しとなってきた海外史料調査を行い、これまで蓄積してきた研究成果との調整・統合を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症拡大による海外渡航が困難になっていたため。翌年度分としては主に旅費として用いる。
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