研究課題/領域番号 |
19K13394
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
地村 みゆき 愛知大学, 経営学部, 助教 (30824065)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 米国先住民女性 / 政治力 |
研究実績の概要 |
2020年度は、オナイダ族女性Laura Cornelius Kelloggの生い立ちと政治活動について、出版されている一次史料および先行研究を元にさらに整理し、考察を加えた。 2021年2月21日に北米エスニシティ研究会の例会で行った研究発表では「同化」「文明化」政策の影響下において家父長的なジェンダー観念が浸透しつつあったアメリカ・インディアン協会の主要な男性メンバーの数人が、歯に衣を着せぬ主張をし、熱心に「ロロミ計画」を実行に移すために行動していたKelloggのことをいわゆる「わきまえない女」として快く思っていなかったことを明らかにした。 また、Kelloggが参政権を求める白人女性に対して、先住民女性の立場から行ったレクチャーの抜粋を分析した。その中で、Kelloggはオナイダ族の女性が持っていた伝統的な役割や権利(指導者任命権や子供の養育権)や、母系制をとる先住民社会では先住民女性の政治参加も平等に保障されていることを白人女性に解説した。参政権運動を担った白人女性が母系制をとる先住民社会、特に、オナイダ族を含むイロクォイ連邦諸部族の女性の役割に関心を持っていたのは従来の研究で明らかになっている。Kelloggが白人女性に対して行ったレクチャーについては、現在は新聞記事しか入手ができていない状況であるが、Kelloggは先住民女性として、そうした興味を利用し、先住民、先住民女性の抱える問題を、新たに参政権を得る白人女性にレクチャーすることで、白人女性の協力を得、白人女性との協働関係を構築しようとした可能性が、その新聞記事から窺い知れた。 Kelloggがアメリカ・インディアン協会内におけるジェンダー・バイアスとどのように向き合ったのか、白人女性との協働関係の構築の実態については、さらなる史料の発掘と調査が必要である。今後の課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度はコロナ感染拡大防止のためのオンライン授業の作成、統一コンテンツの取りまとめ等の予想外の仕事に追われ、資料分析に十分な時間を割くことができなかった。 また、アメリカで史料収集を行う予定であったが、コロナ感染症に関する対策のため、出国禁止の状況が続き、新たな史料を得ることができなかった。 史料の箱単位でコピーを請求することも考えたが、内容を確認できない限り、finding aidだけでは、どの資料を請求するかも分からない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ感染拡大防止のための出国禁止が続く限り、現地で史料収集をすることが不可能であり、新しい資料の発掘が不可能である。現地に出向くことができない以上、国内でできるのは、インターネット上の新聞のアーカイブの閲覧と、現在手元にある、The Papers of Society of American Indiansの資料分析や、出版されている一次史料を考察することであると考える。 研究成果については、最近はオンラインでの学会発表の機会が増えてきているので、そうした機会を利用し、発表していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染拡大防止のための「出国禁止」により、アメリカでの史料調査ができなかったため、出張費として利用予定であったものがそのまま未使用となった。
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