研究課題/領域番号 |
19K13397
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村上 智見 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 特任助教 (70722362)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 考古学 / 染織 / 文化交流 / シルクロード / 中央ユーラシア |
研究実績の概要 |
本研究では、広く古代日本とユーラシアを舞台に、「どのような染織品が、どこで生産され、どこへもたらされたのか?」を明らかにすることを目的に、中国漢代から正倉院宝物がもたらされた8世紀頃までの染織品に着目し、中国および中央ユーラシア出土品の調査を実施する。 2019年~2021年度は新型コロナウイルス感染拡大による影響により、海外調査は実施することができなかったが、国内においてできる限り研究を進め、特にモンゴルの唐様式墓出土染織品、カフィル・カラ遺跡出土炭化織物の分析を進めることができた。2019~2021年度の研究成果として、あわせて学会報告5件、論文・報告等7本を発表することができた。 2022年度は海外調査を再開し、ウズベキスタンのカフィル・カラ遺跡(ソグディアナの都市遺跡)から出土した炭化染織資料の収集、および土器布圧痕の分析を進めることができた。特筆すべき成果としては、文献資料に多く登場するソグドの棉織物はその種類までは明らかになっておらず、これまで平織りだけしか発見されていなかったが、本研究により複雑な技法持つものなど10種類もの技法を明らかにすることができ、綿織物には単なる平織布ではなく高級品が存在していたことを明らかにすることができた。 さらに染織資料および図像資料収集を目的とする小規模な発掘調査を実施し、複数の図像資料を得ることができた。さらに炭化染織品が残存する可能性がある火災層が確認できたことから、来年度以降も調査を継続したい。今年度はこれまで収集してきた染織資料の分析も進めることができ、大きな成果を得ることができた。学会報告1件、論文1本の他、本研究での成果を盛り込んだセミナー2本に共催として参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までは新型コロナウイルス感染拡大によって、予定していたウズベキスタンやモンゴルなどにおける海外調査を実施することができなかったが、本年度は海外での調査を実施することができ、さらにこれまで蓄積してきた資料の分析も大きく進展した。特にウズベキスタン出土炭化染織品の分析が大きく進み、良い成果を得ることができた。本年度でこれまでの遅れをおおむね取り戻すことができたと考え、(2)おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
万が一、新型コロナウイルスの影響などにより海外調査が実施できない場合には、これまでに収集した資料が充実していることから、これらの分析を進めるとともに、所属先(北海道大学)において資料収集、資料整理および検証を集中的に進める。 具体的には、引き続き、1)カフィル・カラ遺跡出土8世紀染織資料の分析、2)図像資料(特に壁画)の収集・分析、3)モンゴル出土の匈奴・突厥・ウイグル期織物の分析、4)コク・テパ出土土器布圧痕の分析を進め、これまでの遅れを取り戻す。本年度は本来最終年度であったが、新型コロナウイルスの影響で次年度に延長されるため、成果報告や論文などで研究成果の発表を行うと共に、本研究の特に重要な成果についてまとめ、刊行したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
直接経費未使用額が生じているが、これは新型コロナウイルス感染拡大の影響により、当初の研究計画を変更し研究を進めた結果、海外渡航などが実施できなかったために生じたものである。2023年度に繰り越し、旅費および国内資料調査の際の旅費や物品、図書購入などに充てる。
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