本研究では、広く古代日本とユーラシアを舞台に、「どのような染織品が、どこで生産され、どこへもたらされたのか?」を明らかにすることを目的に、中国漢代から正倉院宝物がもたらされた8世紀頃までの染織品に着目し、中央ユーラシア出土品の調査を実施する。 2019年~2021年度は新型コロナウイルス感染拡大による影響により、海外調査の実施は叶わなかったが、国内においてできる限り研究を進め、特にモンゴルの唐様式墓出土染織品、カフィル・カラ遺跡出土炭化織物の分析を進めることができた。2019~2021年度の研究成果として、あわせて学会報告5件、論文・報告等7本を発表することができた。2022年度は海外調査を再開し、ウズベキスタンのカフィル・カラ遺跡(ソグディアナの都市遺跡)から出土した炭化染織資料の収集、および土器布圧痕の分析を進めることができた。 2023年度も海外調査を行うことができた。今年度は、ウズベキスタンのコク・テパ遺跡から出土した初期鉄器時代の土器布圧痕について集中的に調査を行った。当該地域においては7世紀以前の実物の織物資料がほとんど出土しておらず、布圧痕から織物文化を明らかにしようと試みた。その結果、平織、綾織、編布など7種類もの技法を明らかにすることができた。中には糸が細く、単糸および織密度が均質の非常に高品質な織物もみられた。以上から、当該地域ではすでに初期鉄器時代に、単なる平織布だけではない高級織物が製作されていたことを明らかにすることができた。 本研究成果は学会発表1件を行ったほか、セミナー報告1件を行うことができた。セミナーでは本研究成果を論文形式で提出しており、今後ブラッシュアップして学会誌に投稿予定である。
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