研究課題/領域番号 |
19K13398
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
瀧上 舞 山形大学, 人文社会科学部, 学術研究員 (50720942)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナスカ / 同位体分析 / 食性 |
研究実績の概要 |
2020年度はCOVID-19の感染拡大の影響により実験・測定がほとんどできず、活動実績が極めて少ないが、一部の試料の分析を進めることができた。 2019年度の夏期調査で採取したクントゥル・ワシ遺跡の動物骨について、45点のコラーゲン抽出を行った。これらの試料は2021年度に総合地球環境学研究所で炭素・窒素同位体比分析を行う予定である。 また、2017年度にナスカ地域で採取した人骨と動物骨20点のコラーゲン抽出を行い、同時採取した植物性試料と共に、山形大学高感度加速器質量分析センターに依頼して放射性炭素年代測定を実施した。その結果、想定通りのワリ期(AD 700-1000)の年代が得られた。 同時に、昭光サイエンスに依頼して炭素・窒素同位体比分析を実施した。ナスカ地域のワリ期の人々は、同地域のナスカ期(200 BC -AD 700)の人々に比べて、C4資源の摂取量が高いことが示された。一方で、イカ期(AD 1000-1400)の人々よりも海産資源の摂取量は少なく、食性の時代差が明らかになった。2022年度はこの結果についてまとめる計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度はCOVID-19の感染拡大の影響により、活動実績がほとんどない。以下にその理由を述べる。 本年度は2019年度の調査で採取した試料のストロンチウム同位体比分析と成果発表を予定していたが、2020年3月に測定予約をしていたところ、分析施設(地球研)が緊急事態宣言に伴い測定延期を決定し、測定ができなかった。すでに試料の前処理と濃度調整が終わった後だったため、測定延期により酸環境下にある試料を廃棄することになってしまった。考古試料であるため同一試料の入手は不可能であり、二度と測定延期は認められず、次の分析計画に慎重になった。また、前処理実験施設(歴博)への出勤および分析施設(地球研)への外来者の訪問が緊急事態宣言後しばらくは制限がかかっており、2020年度の夏ごろまで実験も十分に進められなかった。そのため、2020年度は感染拡大の様子見で終わり、全体の分析を進めることができなかった。 ただし、クントゥル・ワシ遺跡の動物骨について、長期保存が可能な骨試料のコラーゲンは秋ごろに抽出実験を完了した。2021年度はコラーゲンの測定計画から始める予定である。 なお、現地での試料採取は渡航不可のため実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、まず2020年度にコラーゲンを抽出したクントゥル・ワシ遺跡の動物骨の炭素・窒素同位体比分析を実施する。また、2019年度にサンプリングしたコトシュ遺跡の動物骨のコラーゲン抽出と炭素・窒素同位体比分析も進めていく。 クントゥル・ワシ遺跡のストロンチウム同位体比分析は、COVID-19の感染状況次第にはなるが、夏ごろの測定を目標に試料の前処理を進めていく。 これらの結果が無事にでれば、2021年12月の古代アメリカ学会および2022年4月のSociety of American Archaeologyでの発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はCOVID-19の感染拡大により、現地サンプリングの実施不可、測定中止となったため、旅費・その他(測定費)を使用しなかった。そのため2021年度以降に予算を繰り越している。2021年度は測定を行っていく予定であり、その分の分析費・出張費を予算計上している。 ただし、2021年度も国際出張は難しいと予想している。2021年度の状況次第では、補助事業期間を2023年度まで延長することも視野に入れている。
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