研究課題
本研究の目的は、インダス文明の社会構造の一側面を解明することである。具体的には以下のような研究目的がある。①:当文明社会の「初期都市(都市的集落も含めておく)」と「その他の集落(主に農村)」から出土した物質文化をマクロ・ミクロレベルから考古学的に検討し、物質文化にみられる「統一性」と「多様性」を把握する。②:「初期都市」と「その他の集落」における生産様式と交換様式のあり方を、①の研究成果に基づき検討し、明らかにする。その際、人類学による研究や南アジア前近代史研究の成果も積極的に参照する。③:①と②の研究成果に基づき、「初期都市」と「その他の集落」の実態と両者の関係性を明らかにする。本研究では上記①・②・③の研究目的を完遂することで、物質文化にみられる「統一性」と「多様性」の相互の関係と歴史的意義を明らかにし、当文明の社会構造の一側面を解明する。最終年度である2023年度は2022年度未使用額を執行するかたちでインドにおける現地調査を積極的に実施しつつ、①と②の研究成果に基づき、③の研究目的を完遂するために、前年度に引き続き、「初期都市」と「その他の集落」から出土した遺物・遺構の詳細を比較検討した。その結果、インダス文明の社会構造が、生産様式はもとより交換様式も異にする、中心としての初期都市/初期都市結節型広域ネットワークと周辺としての農村/伝統地域社会の有機的関係性に基づいた、「統一性」と「多様性」のせめぎ合い/均衡構造に特徴づけられる多中心的な二重社会という側面をもつ、という当文明の社会構造についての新理解に繋がる基礎的なデータを獲得した。以上の研究期間全体を通じて実施した研究の成果は、国内外の既存の「常識」とは大きく異なる極めて新規性の高い知見であり、さらに都市そして文明とは何か、という人類史における普遍的な問いへの答えにも繋がるという側面で大きな意義、重要性をもつ。
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脇村孝平編著『近現代熱帯アジアの経済発展――人口・環境・資源』
巻: MINERVA人文・社会科学叢書255 ページ: 85-1-8
藤田尚・申東勳編著『都市化の古病理学』
巻: 別冊季刊考古学44 ページ: 13-22