本研究では、ロシア中部・カザフスタンとその周辺地域の青銅器の研究、冶金関連遺物の研究、冶金関連遺構の研究の三つとし、それぞれ①文献からの情報収集、②聞き取り調査、③ロシア・カザフスタンでの資料調査・フィールド調査を実施し、分析・考察をおこなうというのが研究の方針であった。本研究の方法において特に要となるのは③にある国外での資料調査・フィールド調査であったが、COVID19の影響により、2019年度~2021年度は実施できなかった。そのため、この間は①と②に集中し、冶金関連土器や冶金関連遺構、青銅器に関する論考の投稿や学会・研究会での発表を行った。また、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻により、ロシアでの調査が困難となったため、フィールド調査の基軸をカザフスタンに絞ることとした。2022年度からは、カザフスタン東部パヴロダル州の鉱山-銅生産遺跡であるコクタス遺跡の発掘調査に参画し、スラグや銅系金属塊などの冶金関連遺物の調査・研究を担当する機会を得た。今年度は特に遺跡出土鉱石と銅系金属塊の分析結果を検討し、研究会にて予備的な発表を行った。
本研究課題における主な成果は以下のとおりである。 1)各地域の冶金関連土器の種類と使用方法、年代差や分布を明らかにした。2)カザフスタン中部に特徴的と考えられていたトンネル状送風施設付竪穴式の銅製錬炉がウラル山脈周辺に起源をもつ可能性が高いこと、一方で青銅器製作のセオリーは地域ごと・遺跡ごとに異なることを確認した。3)これまで調査数が極端に少なく、議論の俎上に挙げることが難しかったカザフスタン東部の当該期の銅鉱山-銅生産関連遺跡出土冶金関連遺物の分析・検討を推進した。
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