研究課題/領域番号 |
19K13408
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研究機関 | 京都外国語大学 |
研究代表者 |
塚本 憲一郎 京都外国語大学, 京都外国語大学ラテンアメリカ研究所, 客員研究員 (20755368)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 富の蓄積と政治的地位 / 古典期マヤ文明 / エル・パルマール遺跡 / オステオバイオグラフィー / 黒曜石 |
研究実績の概要 |
コロナ禍による海外渡航制限のために、当初予定していた現地での遺物の肉眼・理化学分析の一部が実施できなかったが、与えられた状況の中で最大限の成果を出すことができた。本年度の目的は、前年度の発掘により出土した考古資料を分析することで、これまでの出土遺物と比較分析し、集団内における経済的差異を明らかにすることである。土器は肉眼分析を完了したが、海外渡航制限のために、経済的差異の指標となる顕微鏡による胎土や混和材の特定を実施できなかった。その代わりに、本年度は経済的差異指標となる遠距離交易によって獲得した黒曜石製品に着目した。エル・パルマール遺跡において、これまで出土している280点の黒曜石製品を肉眼・理化学分析した。肉眼による技術分析では、石刃を制作した後に残った石核の一部は、研磨剤として使われていたのを明らかにした。次に携帯型蛍光X線分析計を用いた化学分析によって、黒曜石製品の産地を同定した。その結果、これらはグアテマラ高地のエル・チャヤル、イシュテペケ、サン・マルティン・ヒロテペケの三つの産地に分類できた。50㎝ごと採取した床面のサンプルは、メキシコ国立自治大学人類学研究所において理化学分析を実施した。建造物内外の活動を復元するために、現在は床面に広がる化学残留物の空間分布を分析中である。 発掘によって出土した墓の分析では、オステオバイオグラフィーと考古学、碑文解読を組み合わせた新しい手法を確立した。この手法を用いて旗手の生前における健康状態と当時の政治状況の変化との相関関係を復元して得た成果を、中南米研究における代表的な査読学術雑誌であるLatin American Antiquityに発表した。この論文は一定の評価を得て、アメリカ、フランスなどの出版界からインタビューを受けた。その他にも査読論文や国際会議において成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍によって、当初予定していた現地での遺物の肉眼・理化学分析の一部が実施できなかったことに加えて、大学の閉鎖によって研究室へ立ち入れず、一時的に資料の一部にアクセスできなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、出土した炭化物の放射性炭素年代測定と土器分析を組み合わせて、発掘した旗手のリーダーが居住していた建造物GZ7と饗宴の準備等に使われていたと考えられる建造物GZ9の建築年代を特定し、グスマン・グループ全体の編年を細分化する。また、これまでの分析によって取得したデータをまとめて中心部や他の建造グループから出土した遺構や遺物と比較し、都市王朝内における経済的差異や、富の蓄積と政治的地位の関係を総合的に考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によって海外渡航ができず、旅費と分析費の一部を使用しなかったために差額が生じた。次年度に繰り越された予算は、研究所所長との打ち合わせのための旅費、メキシコ政府より許可を得て現地の研究補助者によって持ち込まれた炭化物のサンプルの放射性炭素年代測定、同様に許可を得て輸出した黒曜石製品の実測用道具の購入費などに割り当てる予定である。
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