研究課題/領域番号 |
19K13412
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研究機関 | 公益財団法人元興寺文化財研究所 |
研究代表者 |
坂本 俊 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (40808903)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 考古学 / 技術史 / 歴史学 |
研究実績の概要 |
本研究では、「石工技術」を「石垣構築技術」と「採石・加工技術」の二種の技術を包括的、かつ体系的に捉えた定義として位置づけ、石工技術を可視化することで考古学を専門としない行政の文化財担当者でも解釈可能な指標の構築を目指す。 令和3年度は、データベースへの情報の蓄積を進めた。新型コロナウイルスの流行による研究活動と移動に制限が生じたため、各地の城郭遺跡の現地調査が行うことが出来なかったが、2022年2月15日に大阪府阪南市に所在する新発見の石切場を踏査し、近世~近代にかけての和泉砂岩の採石・加工技術の様相を検討することができた。 徳川期大坂城では、和泉地域で石垣背面の裏込めに用いる栗石が採取されている。踏査を行った和泉砂岩を産出し、石造物などの石材を切り出した石切場から近世段階に遡る矢穴痕を発見した事実は、コッパ石を供給した可能性を示唆するものである。徳川期大坂城の石垣のほとんどは花崗岩で構成されており、和泉砂岩を石垣石材に用いたとは考えにくい。石切場に残存していたこっぱ石が近代の矢穴痕を有していたことからも推測される。 このような、近世の石切丁場でこっぱ石がほとんど確認できない事例は、江戸城の石垣石材を切り出した伊豆石丁場遺跡でも認められるが、石垣の裏込めに用いたかどうかまでは明確ではない。各地の事例を含めて検討の余地がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの蔓延による活動と移動の制限により、予定していた地方への現地調査が行えなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
予定していた現地調査が新型コロナウィルスによる活動自粛によって実施できなかったことが大きな原因である。令和4年度では、現地調査の確実な実施と人材を雇用したうえでデータ整理を進めていく。令和5年3月末の成果報告書の刊行を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた背景には、新型コロナウイルスの蔓延による研究活動と移動の制限により、地方への現地調査が実施できなかったことによる。そのため、研究機関を一年延長し、積極的な現地調査を推し進める計画を立てている。加えて、次年度末には報告書の刊行を目指しており、その印刷製本費の支出を予定している。
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