2021年度は、昨年度まで調査を実施してきた日本国内出土の資料に加え、前漢代で国内で所蔵する資料の調査をすすめた。また、走査型電子顕微鏡(SEM)での観察以外の方法を検討するために、ラマン分光やミュオンビームを用いた炭の分析も実施した。 国内の調査では、岡山県での墨書資料の調査を実施し、岡山県域における墨の変遷過程や地域性を把握することができた。前漢代の資料の調査では楽浪郡および前漢出土とされる硯と研石のSEM観察を実施した。いずれの資料も、墨の粒子が確認でき、国内出土の資料よりも粒子径がやや大きいことがわかった。 SEMでの観察以外の分析については、奈良先端科学技術大学院大学と協力してラマン分光を用いて現代の墨および黒色顔料の基礎資料の調査を実施した。他に、高エネルギー加速器研究機構と協力してミュオンビームを用いた墨の分析を実施した。 当初計画にあった海外資料の調査については、コロナウイルス感染拡大の影響により、実施が難しいと判断し、国内所在資料の調査を主体とし実施した。
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