研究課題/領域番号 |
19K13415
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
久井 貴世 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (00779275)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | タンチョウ / 古代DNA / ツル科 / 歴史鳥類学 / GIS |
研究実績の概要 |
本研究は遺跡から出土するタンチョウの骨と文献史料に記載されるタンチョウの記録を用いた調査を実施し、タンチョウの歴史的な分布と変遷、および過去のタンチョウと現生の北海道のタンチョウの遺伝的な関係性を解明することを目的とするものである。 2022年度は、遺跡出土のツル科の骨の所在を明らかにするための追加の文献調査と、タンチョウの骨の同定に資するための現生のツル科の骨の観察と計測を実施した。 (1)ツル科の骨の所在調査:2021年度までに収集した111遺跡の情報に加え、2022年度は新たにツル、ツル類、ツル科の記載がある13件の遺跡(宮城、千葉、東京、神奈川、愛知、愛媛、長崎、熊本、鹿児島)の情報を確認、追加した。また、これまでに確認したツル科の骨について、残存部位の情報の整理を行った。 (2)現生のツル科の骨の観察と計測:タンチョウの骨の同定に資するため、現生のツル科の骨の観察と計測を実施した。2022年度は特に、タンチョウと体サイズが近いとされるソデグロヅルのデータを重点的に収集した。2022年度はタンチョウ13個体、マナヅル4個体、ソデグロヅル6個体、クロヅル1個体、アネハヅル2個体、オグロヅル1個体、ハゴロモヅル1個体、ホオカザリヅル2個体、合計30個体の観察と計測を行った。 (3)現生のツル科の骨の計測結果の整理と比較:これまでに収集したデータを部位別、計測箇所別に整理し、骨のサイズによってタンチョウとそれ以外のツルの種の区別が可能かどうかを検討した。日本で記録のある7種間では、一部でタンチョウとソデグロヅルとのサイズの重複を確認した。あわせて、江戸時代に舶載の記録があるオオヅルとタンチョウでも一部で重複がみられた。部位によっては区別が可能な場合もあることが明らかになったが、形態的特徴とあわせて検討する必要があることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、試料の所蔵機関において遺跡出土のツル科の骨の形態分析を実施し、タンチョウと同定した骨については古代DNA分析を行なう計画であった。しかし、現生のツル科の骨の観察と計測、およびその整理に想定以上の時間を要してしまったため、遺跡出土のツル科の骨の観察・計測を実施することができず、2022年度に実施を計画していた古代DNA分析も行うことができなかった。一方で、現生のツル科の骨の調査は概ね終了し、同定のための基準の作成も進めることができたことから、現在までの進捗状況はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は試料の所蔵機関において遺跡出土のツル科の骨の観察と計測を実施し、タンチョウと同定した骨について、管理者から許可を得た試料を対象に古代DNA分析を行なう計画である。対象とする試料については、残存部位等の条件をふまえたうえで整理できているため、調査を開始するにあたって支障はない。現生のツル科の骨については、サイズの重複が確認できたタンチョウ、ソデグロヅル、オオヅルに限り、新たに所在が確認できた場合は観察と計測を実施する。さらに、タンチョウと重複する可能性のある種としてコウノトリの存在を指摘されたことから、すでに所在が確認できているコウノトリの骨を対象とした調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は遺跡出土のツル科の骨の観察・計測を実施する計画であったが、現生のツル科の骨の調査に時間を要したため、遺跡出土のツル科の骨の現地調査および古代DNA分析の実施に影響が生じた。これにより、遺跡試料に関する調査旅費および分析調査に係る物品費として使用を計画していた予算に変更が生じた。2023年度は所蔵機関における形態分析調査を進め、古代DNA分析を実施する計画であるため、調査に係る物品費および旅費としての使用を計画している。また、資料整理、実験補助を行なう研究協力者の雇用のため人件費としての使用を計画している。
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