研究課題/領域番号 |
19K13422
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
古田嶋 智子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 客員研究員 (30724588)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酢酸 / ギ酸 / 木材 / 放散 / 吸着 / 博物館環境 |
研究実績の概要 |
本研究は博物館で木材を安全に使用するために、木材から放散する酢酸、ギ酸の放散挙動を解明し、放散挙動を考慮した木材の選定指標の確立を目指すものである。今年度は、木材からの酢酸、ギ酸の放散挙動の解明に重点を置き、以下の項目について研究を実施した。 1)木材からの酢酸、ギ酸放散挙動の把握。前年度に引き続き、試験体として国産のナラ、ブナ、キリ*、スギ材を用いて小型チャンバー法による放散試験を実施した。(*キリ材は昨年度にもデータを取得しているが、今年度の試験環境及び設備が前年度より変更となったため、再度試験を実施した。)放散試験は約1か月間、一定の間隔をあけて継続して行い、各試験体からの酢酸、ギ酸の放散、及び時間の経過による放散速度の減衰を確認した。 2)木材からの酢酸、ギ酸放散速度における数値解析。木材から放散する酢酸、ギ酸の挙動解析のために、放散試験で得た各試験体からの酢酸、ギ酸放散速度に対して、建築材料から放散する化学物質の減衰をあらわすために利用される関数モデルを用いて回帰した結果、実測値とよく一致した。関数モデルの適合により、各試験体をモデルとして木材からの酢酸、ギ酸の放散予測、及び相対的な比較が可能となることがわかった。 3)サンプリングバッグを用いた吸着試験の検討。前年度から引き続き、サンプリングバッグを用いた試験実施のための検討を進めた。サンプリングバッグ内でパーミエーションチューブを発生源として、指標とする化学物質(酢酸)を一定の濃度、速度で放散させるための検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
試験を実施する環境や設備が前年度までと変わり、試験環境の整備と放散試験装置などの再構築に時間を要した。また、放散試験は約1か月の間、一定の間隔でサンプリングを実施する連続試験となるが、新型コロナウィルスの影響により試験を計画通りに進めることが困難であったため、吸着試験への着手が遅れた。したがって、全体の進捗状況としては当初計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1)サンプリングバッグを用いた木材の吸着試験を実施し、木材における酢酸、ギ酸吸着特性を明らかにする。 2)各木材における酢酸、ギ酸の放散、吸着特性を考慮した上で、博物館で用いる木材の選定指標について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、成果発表のための国内外の学会大会が中止、延期、またはオンライン開催に変更となり、当該予算を翌年度に繰り越しとした。同理由により、計画していた外部施設での調査は中止せざるをえない状況であった。当該予算は翌年度に予定している吸着性能試験の試験体数追加の費用に充てる。研究の進捗状況により、今年度から翌年度へ実施計画を変更した吸着性能試験にかかる予算が未使用額として計上されている。本試験は翌年度に実施予定である。
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