研究課題/領域番号 |
19K13424
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研究機関 | 東北芸術工科大学 |
研究代表者 |
元 喜載 東北芸術工科大学, 文化財保存修復研究センター, 講師 (90796202)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 保存科学 / 保存修復 / 酸性紙 / 紙の酸化防止 |
研究実績の概要 |
世界において博物館や図書館などでは深刻な洋紙の酸性化問題を抱えており、各機関の予算や人手不足などにより、紙資料の活用ができず放置されているケースも多々ある。その解決方法を探るために本研究では、紙漉き和紙である弱アルカリ性質の「三須紙」と「宇陀紙」に着目した。従来の研究では実施されなかった両紙の物性を測定の上、加速劣化実験を通し、洋紙の酸性化防止方法を探る。現在、洋紙の酸性化を防ぐために各機関で行われている様々な処置は、高額な費用や高度な技術を要することが多いため、本研究で行う測定および実験により、予算や人手が不足している地方自治体などの小さい機関でも貴重な資料が保存・活用できるようにすることを目的とする。さらに本研究で行われる全ての科学的分析結果をデータ化することにより今後さらなる和紙の活用法の検討が可能になる。同時に結果発表により国内外の関連機関に情報を提供し、実験結果を活用することにより効果的な予防保存にもつながる。 昨年度は本研究代表者の所属の異動による研究実施計画の見直し及び文献調査を中心に研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本科研が採択され、初年度だった2019年度は所属機関の異動があった。研究所から大学の附置研究所に移り、分野は近いものの業務内容が全く異なっているため、前期の研究推進が困難だった。 初年度の研究に予定していた、「三須紙」、「宇陀紙」の物性の測定や加速劣化実験などは専門測定機械が必要とされる。しかし、現在の所属機関には測定機械がなく、前職場(東京文化財研究所)、もしくは専門の施設を訪問し測定を行う必要がある。とはいえ、現在も新型コロナウイルスによる影響や移動制限もあり、研究に必要な施設を訪問することがまだ実現できていない。 なお、初年度の調査で行く予定だったアメリカのスミソニアン博物館・図書館や日本国内の紙漉き工房(奈良・吉野)などは移動制限などがあったため、現在は文献に頼る研究を主に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
徐々に都市間の移動や施設の利用が可能になってくると考えられるため、これからは研究のペースがあがると考えている。 海外の調査はいつ再開できるか未定ではあるが、国内の現地調査や研究施設での実験及び研究は可能になると思われるので、昨年実施できなかった研究に専念できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
・物品費: 実験環境が整わなかったため、実験用紙試料とうを購入しなかった。 ・旅費: 国内旅費については、訪問を予定していた紙漉き工房の作業が冬季に行われるが、新型コロナウイルスの影響により、出張できなくなった。また、海外の調査は最初から2~3月で予定を組んでいたが、これもコロナで実施できなかった。 ・人件費・その他: 海外調査の通訳費や、現地で収集した資料の翻訳の費用が、上述の理由により発生しなかった。また、現地での車両借上げ代も発生しなかった。
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