研究課題/領域番号 |
19K13437
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
梶山 貴弘 日本大学, 理工学部, 助教 (50772034)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 氷河変化 / 地球温暖化 / ドローン / 写真測量 / 衛星画像 / GIS / 河岸侵食 / カラコラム山脈 |
研究実績の概要 |
地球温暖化が進行している中で,パキスタン北部に位置するカラコラム山脈では,近年,氷河が拡大傾向にある。本研究では,同山脈北西部を対象として,やや長期的な時間スケールの視点から,氷河変化と気候変化の関係を明らかにすることを目的としている。2022年度はおもに,①氷河面積の変化解析,②写真測量,③河岸の変化解析,を実施した。 ①氷河面積の変化解析では,2021年度に解析した結果についての分析を進めた。すなわち2021年度は,同山脈北西部を対象に,1990年・2000年・2010年・2020年の衛星画像を使用し,個々の氷河範囲を年代別に判読・マッピングして,1990-2020年における氷河面積の変化を明らかにしている。この結果について,2022年度は,氷河変化の傾向や,変化傾向別の氷河の位置および形態的特徴などについて分析した。また,客観解析データを使用して,気候変化との関係についても分析を進めた。これらの内容については,現在,論文執筆を進めている。 ②写真測量では,2019年夏季の現地調査において,UAV(ドローン)によって撮影した空中写真のうち,未解析の写真を用いて,PCと写真測量ソフトによる多視点ステレオ写真測量を実施し,パスー氷河に近接するフンザ川右岸域における3次元モデル,オルソ画像,DEMおよび等高線図等を作成した。これは,2019年夏季の現地調査中に偶然遭遇した河岸侵食に関する研究に利用するデータであり,当該地域における氷河変化に関わる現象と推測される。 ③河岸の変化解析では,前記②で作成した各種データを判読して,GISソフトを用いて河岸侵食による地形変化について解析した。②では,2時期のデータを作成しており,それらのデータをGISソフトで判読・マッピングすることで,その期間の地形変化量を特定することが出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度に引き続いて2022年度も,新型コロナウイルス感染症の影響により海外渡航が実質不可能となり,現地調査を実施することが出来なかったため,当初の計画よりも遅れており,また一部の研究内容を変更する必要性が生じた。 当初の計画では,2022年度は,現地調査とそれによって得られたデータ・試料の解析・実験を予定していたが,前述のように3年間分の現地調査のデータが全く得られていない。そのため2022年度は,室内におけるPC解析のみとし,①氷河面積の変化解析,②写真測量,③河岸の変化解析を実施した。①氷河面積の変化解析は,2021年度より新たに加えた内容であり,国内で得られる衛星画像のみを基にした,PC解析である。この解析・分析によって,広域的な氷河変化の把握と,その特徴について分析を進めることが出来た。②写真測量と③河岸の変化解析は,2019年度の現地調査中に偶然遭遇した河岸侵食に関する研究であり,当初の計画には無かったものである。当初計画における現地調査データが得られず研究を進められない一方で,偶然得られたデータを基に,新たな視点から当該地域における自然現象について研究を進めることが出来た。 以上から,新型コロナウイルス感染症の影響により,当初計画を一部変更せざるを得ない状況にあるため,当初計画よりも遅れていることになるが,その一方で日本国内において実施可能な研究を進めることが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
現地調査は本研究の主要な研究手法であり,現地調査によって得られる高分解能データが,貴重な成果の一つでもある。しかし,2020年度から2022年度までの3年間においては,新型コロナウイルス感染症の影響により海外渡航が実施出来ず,当初に計画していた現地データの大部分が得られていない。2023年度は,現在のところ現地調査を実施する予定であるが,その調査内容については,当初計画から改める必要がある。 そこで2023年度の現地調査では,1:パスー氷河末端部におけるUAV(ドローン)による空中撮影と観察,2:フンザ川河岸におけるUAV(ドローン)による空中撮影と観察,を実施する。2については,河岸侵食に関する内容であるが,これは氷河縮小に伴う融氷水と関連する可能性があり,地形・地質環境や,被害状況について確認する。なお現地調査前までには,1・2の調査についての予備解析や,機材準備を整える。 現地調査以外においては,2022年度に実施した①氷河面積の変化解析について,論文として内容をまとめる。また現地調査後には,それによって得られたデータの解析・分析を進め,これまでに得られている結果と合わせて,内容をまとめていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた最も大きな理由は,新型コロナウイルス感染症の影響により,現地調査が実施出来なかったことによる。そのため,本研究の直接経費においてとくに割合の高い旅費の支出が無く,多くの残額が生じた。また旅費以外においても,現地調査に必要な物品購入や,現地調査で得られたデータ解析に関する解析補助者の導入を見送ったため,物品費および人件費・謝金の次年度使用額が生じた。 次年度の使用については,現地調査の渡航費と,それに必要な機材の購入を予定している。それに加えて,PC解析に必要な機器・ソフトウェアについても,購入を予定している。また,無償データが得られない場合は,有償の衛星画像・気象観測データの購入についても検討している。
|