研究課題/領域番号 |
19K13445
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
立見 夏希 (川口) 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (80647834)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 参加型ウルバニズム / 社会連帯経済 / 脱工業化 / フランス |
研究実績の概要 |
本研究は、2000年代以降、フランスで活発に展開する「社会連帯経済(ESS)」運動の文脈を踏まえて、都市社会地理学分野の今日的争点である、新自由主義に還元されないオルタナティブな空間形成のあり方を展望するものである。 研究初年度である2019年度は、第一に、フランスを中心とした、参加型ウルバニズム、空間整備政策、社会連帯経済に関する最近の議論と動向を整理した。1960年代から70年代の議論の蓄積、旧工業都市や工業地域、地方都市の抱えている諸課題、ESS運動の広がりといった重層的な背景を有しながら、参加型ウルバニズムに関する議論が深化し、多様な実践が展開していることが明らかとなった。その中でも、ウルバニズムにおけるパラダイムシフトおよび日本の地域再生への住民参加の事例をめぐって、論考を執筆した。 第二に、本研究課題のプレ調査として11月にフランスを訪れ、文献資料の収集と、パリ市内のESS運動の拠点やジェントリフィケーションが進行する街区のフィールドワークを行なった。その際、第一点目の研究実績としてあげた議論の整理に用いた文献を効率よく収集することができた。さらに、フィールドワークを通じて、パリ都市圏において、参加型ウルバニズムが注目を集める一方で、やはり大きなジェントリフィケーションの圧力があることを確認するともに、短時間ではあるが、アンチジェントリフィケーションの運動を行う当事者にインタビューすることができた。加えて、今後の調査に関する現地の都市研究者とコンタクトを取り、今後の研究協力へとつなげることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初2019年度に予定していた、現地プレ調査と資料の収集については当初予定していた通りおおむね順調に行うことができた。しかしながら、統計調査とGISによる社会地図の作成によって、フランスの旧工業都市/旧工業地区の都市構造と、社会/経済/政治的状況を把握する作業については、当初の予定ほどは進捗させられなかった。1960年代から1970年代の議論を継承した、参加型ウルバニズムの重層的な議論を整理することに、当初想定していたよりも時間を割かざるを得なかったためである。2020年度早い段階で目処をつけたい。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は、統計分析を早い段階で行なった上で、これまでの調査と議論の整理およびインフォーマントの関係を下敷きとした、本調査の年と位置付けている。リール地域を中心に、パリ郊外の旧工業地区の空間形成のアクターへのより詳細なインタビュー調査を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
現地プレ調査と文献調査に関連して、資料整理と翻訳を自身で行なったこと、効率的に文献収集が行えたこと、統計分析と社会地図の分析を次年度へと継続したこと等により次年度使用額が生じている。次年度の海外調査の費用と、学会発表等の国内旅費へと充当する。
|