研究実績の概要 |
本研究は、2000年代以降、フランスで活発に展開する「社会連帯経済(ESS)」運動の文脈を踏まえて、都市社会地理学分野の今日的争点である、新自由主義に還元されないオルタナティブな空間形成のあり方を展望するものである。その際、①参加型の空間構築、②ESS運動に呼応した都市再生政策、都市計画、建築家の実践への着目、③フランスの都市計画の文脈との接合を論点としている。 2022年度は、3月末に(次年度の4月にかけて)フランス現地調査を行なった。リール地域を拠点とするESSの支援組織であるAPESへのインタビュー、旧工業地域・ユニオン地区のフィールドワークを行なった。また、グランパリ構想やオリンピック開催、住宅不足との関連で空間整備が進展するパリ郊外の旧工業地域のフィールドワークを行なった。関連する2022年度の業績としては下記のものが挙げられる。Kawaguchi, N. (2023). From “Politique de la Ville” to “Renouvellement Urbain”: Paradigm Shifts of Urbanism in Plaine Saint Denis, Paris. In: Mizuuchi, T., Kornatowski, G., Fukumoto, T. (eds) Diversity of Urban Inclusivity. International Perspectives in Geography, vol 20. pp.273-284. Springer, Singapore. さらに、昨年度に引き続き、日本の丹波篠山地域における住民参加型のリノベーションと地域再生の展開に関する調査も継続して行なった。リール地域の実践と対照させることで、アクターの動機付けや活動の展開の相違が明らかとなった。
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