今年度は、チリ共和国に渡航して現地調査を行った。 具体的に、まずLos Lagos大学のFrancisco Araos氏から、チリ共和国南部の先住民に関する概略について説明を受けた。近年のチリでは、先住民の慣習的な漁場利用を尊重する法律が施行され、それに基づき、ECMPO(Espacios Costeros Marinos Pueblos Originarios)と呼ばれる漁場が先住民コミュニティに認可されることとなった。しかし実際には認可プロセスが複雑であることから、ほとんどの地域ではまだ審査途中であるという。ただ、法的正当性を得たことから、先住民団体の団結力や行動を強化する意味はあったという。また、Austral大学の人類学者であるRicardo Albarez氏からは、チリ南部、チロエ島の漁村社会や先住民の漁業文化について、Los Lagos大学のAlejandro Retamal氏からは、チリ南部の先住民漁業者コミュニティとサーモン養殖など諸開発とのコンフリクトについてそれぞれ説明を受けた。チリでは近年サーモン養殖が未開発の南部(パタゴニア地方)に移転しており、それに伴い先住民漁業者コミュニティとのコンフリクトも活発化しているという。その一方で、都市部近郊では観光業とのコンフリクトなども起きているとのことであった。また、Rodrigo Diaz氏からはチリ中部の乾燥帯におけるChangoという先住民について説明を受けた。Changoは調査の余地がある先住民であり、チリ国内でも十分に知られていない。また、ロスラゴス州のCarelmapu地区では先住民コミュニティのリーダーへの聞き取り調査も行い、非先住民の漁業者との間のコンフリクトを確認することができた。 以上、チリの漁業部門における先住民の立ち位置と政策的動向について理解を深めることができた。
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