研究課題/領域番号 |
19K13451
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研究機関 | 神奈川県立歴史博物館 |
研究代表者 |
武田 周一郎 神奈川県立歴史博物館, 学芸部, 学芸員 (10803273)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 朝鮮総督府 / 台湾総督府 / 陸地測量部 / 内務省地理局 / 岩橋教章 / 岩橋章山 / 歴史地理学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本・台湾・朝鮮における地図製図・印刷技術の展開過程を明らかにすることである。近代的な地図は測量技術の高度化とともに、印刷技術の向上を受けて精緻化した。地図の精緻化は測量と印刷という技術の両輪で成り立っているが、前者に比べて後者への関心は薄かった。そこで研究代表者は、地図の製図・印刷技術という地理学・歴史学・美術史学の境界領域に存在する問題に対して、人文系の総合博物館に勤務する立場を活かして研究課題に取り組んでいる。 本研究では、研究期間内に明らかにする目標として、1)19世紀後半から20世紀前半の日本で地図の印刷技術はどのように変化したか、2)同じく製図技術はどのように変化したか、3)上記の変化は東アジアという空間的な広がりのなかでどのように展開したか、という3つの課題を設定し、研究期間初年度の2019年度は以下の調査に取り組んだ。 まず、1)・2)について、所属機関が所蔵する「神奈川県鳥瞰図」の分析を行った。同図は、神奈川県観光連合会の委嘱を受けた鳥瞰図絵師の吉田初三郎が1932(昭和7)年に描いた肉筆の鳥瞰図である。「神奈川県鳥瞰図」が描かれた工程や同図をもとに印刷された「神奈川県観光図絵」の利用の実態を詳細に明らかにし、成果を論文や口頭発表で公表した。 続いて、3)について、古書店から購入した新出資料を用いて朝鮮総督府臨時土地調査局の動向を検討した。分析対象とした「地形通報」は、臨時土地調査局で一般図の測量と調製を担った技術課地形科で発行された職員向け定期刊行物である。1914~1916年に発行された1~37号のうち28号分を1冊に綴ったもので、業務の進捗状況、技術上の注意、科員の出張・異動などの情報が掲載されている。本資料の分析に着手した結果、旧蔵者である地形科の中尾芳太郎技手や、技術課長の豊田四郎といった技術者の動向が判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、朝鮮総督府臨時土地調査局における地図作製の動向に関する新出資料を入手した。そのため、次年度に実施する計画であった同局に関する分析について、予定を繰り上げて着手した。あわせて、所属機関の所蔵資料を分析し、その成果を論文や口頭発表として発表したため、計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
先行して着手した朝鮮総督府臨時土地調査局に関する分析を進め、その成果を発表する。なお、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、出張調査の計画見直しが想定されるが、所属機関が所蔵する資料や、既に入手している資料の分析を優先して研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たに購入した資料の分析に注力したため未使用額が生じたが、全体の研究計画に変更はない。よって、未使用額は引き続き研究を遂行するための経費として充当する。なお、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、出張調査の計画見直しが見込まれるが、次年度は4年間の研究期間のうち2年目にあたるため、状況に応じて着手可能な調査を順次繰り上げて実施する予定である。
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