研究課題/領域番号 |
19K13453
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
CLERCQ LUCIEN 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 特任教授 (30749578)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Ainu / Identity / Multiculturalism / Miscegenation / Hafu / Hybridization / Reconstruction / Nukishio Kizo |
研究成果の概要 |
3年間の調査で、伝統的な儀礼に基づく社会文化的行事の再構築に向けたアイヌの取り組みを明らかにした。同時に、先住民自身による宣言書を1934年に上梓した先駆的なアイヌの思想家貫塩喜蔵の重要性を示した。 アイヌの要求と戦略は、根強い人種差別的な状況の中で「アイヌプリ」という重要な概念を維持するためのコミュニティの再構築に向けられている。伝統的な行事の実践は、並行的に存在する非時間的な空間とのつながりと、北海道の環境と密接に結びついたアニミズム的な精神性を回復する。北海道にはアイヌ語由来の地名や、祖先やカムイを祀る祭壇の痕跡が広く認められ、アイヌの儀式は、その過去と現在の結びつきを顕在化するのである。
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自由記述の分野 |
Anthropology
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
社会正義に向けたアイヌの要求は、日本社会におけるマイノリティたちの要求とも通底し、社会を構成する複数のアイデンティティを、その細かな差異と特異性と共に認めることを求めている。アイヌは、アイデンティティが完全に固定されたり決定的に閉じられたりすることはなく、伝統の更新と新たな混血によって常に変化することを教えている。また、ナショナリズムとは異質な生存戦略によって練磨されたアイヌのアニミズム的なメッセージは、自然や人の支配ではなく、穏やかでバランスのとれた関係を環境との間に保つことの重要性を教えている。多様性の尊重と地球の保全という将来的課題を考察する上でも本研究の意義は小さくないと考える。
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