研究課題/領域番号 |
19K13454
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
奈良 雅史 国立民族学博物館, 超域フィールド科学研究部, 准教授 (10737000)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 宗教 / 移動 / イスラーム / 中国 / ムスリム / 回族 / モビリティ / 台湾 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中国内陸部から中国沿岸部にアラビア語通訳として出稼ぎに行く回族と呼ばれるムスリム・マイノリティの動きに焦点を当て、中国政府による「一帯一路」構想の推進に伴う中国とイスラーム諸国との間での経済交流の促進が人々の移動の活発化をもたし、イスラーム復興を促進してきたプロセスを明らかにし、宗教とモビリティをめぐる理論的モデルを提示することである。 2021年度も昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により現地調査の実施が困難であったため、報告者は研究目的を達成するために、これまでの現地調査で得られてたデータの分析とその発表を進めた。国際貿易都市として発展してきた義烏市におけるムスリム・コミュニティの多文化状況をその経済活動が前景化する場所性との関係から検討し、その成果は国際シンポジウムでの口頭発表および英語論文として発表した。 加えて、上記の研究目的を達成するための比較研究として、近年インドネシアをはじめとする東南アジアからのムスリム労働者が増加する台湾におけるムスリム・コミュニティを焦点を当てた研究を実施した。その際、新型コロナウイルス感染症による影響で現地調査が困難な状況を踏まえ、中国回教協会の機関誌『中国回教』を分析の対象とした。その分析を踏まえ、報告者は台湾におけるムスリム・コミュニティの多文化状況がいかに展開されてきたのかを中華系ムスリムの視点から明らかにした。そのうえで、台湾におけるムスリム・コミュニティが異なる時間性をもった複数のモビリティによって再生産されてきた状況を考察した。その成果は日本語の編著として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画は、やや遅れているといえる。当該年度は英語論文1本、日本語の編著1冊、中国語の共著論文1本を出版し、国内外のシンポジウムや研究会で研究発表を7回行った。そのため、研究成果の発表という点では一定の進捗があった。ただし、新型コロナウイルス感染の拡大に伴い、当該年度に予定されていた現地調査を実施することができなかった。そのため、これまでの調査データの分析、文献資料の分析により、研究を進めたものの、当初予定よりは研究計画は遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症をめぐる状況が改善し次第、当該年度に実施できなかった現地調査を実施する予定である。そのために調査地の人びとに連絡をとり、現地の情報の収集に努めている。ただし、新型コロナウイルス感染症をめぐる状況は予断を許さない状況が続いているため、現地調査が実施できなかった場合を考慮に入れ、それに代わる文献調査の準備も進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染症の影響により、当初参加を予定していた国際学会や国内学会および研究会がオンラインで開催されたこと、ならびに当初実施を予定していた中国における現地調査が実施できなかったためである。次年度は世界的に入国制限の緩和が進められているため、今年度実施ができなかった調査もあわせて実施するために準備を進めている。
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