研究課題/領域番号 |
19K13455
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
金子 亜美 宇都宮大学, 国際学部, 助教 (90837270)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 南米先住民 / キリスト教化 / カトリック教会 / イエズス会布教区 |
研究実績の概要 |
本研究は、17-18世紀スペイン領南アメリカの辺境地域における修道会主導の先住民のキリスト教化プロセスを、実際に宣教に用いられた史料から明らかにするものである。 本年度は研究計画に即し、研究のために必要となる史料の閲覧・複写および転写の作業を中心に進めた。年度の前半には、すでに入手できている史料の整理を行った。それを踏まえ、8月にはアルゼンチンのブエノスアイレス大学アラタ図書館を訪問し、南米チキトス地方のイエズス会布教区で宣教師によって作成されたスペイン語-チキト語(先住民言語)辞書、チキト語-スペイン語辞書の撮影を行った。またこのブエノスアイレス滞在では、当地に関する人口調査簿などを所蔵する国立総合文書館を訪問する機会にも恵まれた。 日本国内では年度を通じ、入手した史料の転写作業を進めた。その際、同言語に関する文法書の書き起こしのために一部人件費を支出した。この転写作業を通じ、特にイエズス会布教区で掲げられたキリスト教化に役立つ「言語」や「音楽」とは何であったか、そして先住民社会に在来のそれら概念とはいかなるものであったかをまずは把握する必要性を認識した。 上記の研究に加え、本年度は研究成果の公表にも力を入れた。まず6月の日本文化人類学会では、「言語人類学とエスノグラフィ:コミュニケーションから文化を記述する」と題する分科会において、辞書史料に関する中間的な報告を行った。また8月のブエノスアイレス滞在では、日本におけるラテンアメリカ研究に関するシンポジウムと研究会でスペイン語の発表を行う機会を得た。さらに音楽に関する共著、スペイン語論文の翻訳、キリスト教化に関する文化人類学的研究のレビュー論文、先住民のキリスト教かにおける言語の役割に関する研究論文を発表し、博士論文を提出した。いずれも、これまでの研究の総括および来年度以降の研究の基礎となるレビューを含むものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の計画通り史料の収集・閲覧および分析に専念することができた。また、本研究の基礎となるこれまでの研究成果を数多く発表することができた点で、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は史料の転写および分析に力を入れつつ、海外での史料調査や研究発表を継続する予定であった。しかしながら昨今の新型コロナウィルス感染症をめぐる情勢に鑑み、フランスでの史料調査の予定はおそらく自粛する必要がある。そのため、現在手元にある史料の転写と分析を中心に研究を進めていくことになる。 また成果発表についても、7月のポルトガルでの国際会議への査読が完了していたものの、オンライン開催となることが確定している。この他にもすでに研究発表の予定があるものの、オンラインでの参加の可能性を模索しつつも、口頭発表以外の論文執筆などを中心に行うつもりである。
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