研究課題/領域番号 |
19K13456
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高橋 絵里香 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (90706912)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高齢者ケア / フィンランド / 民営化 / 私事化 |
研究実績の概要 |
今年度は、フィンランドの高齢者ケア制度の私事化/民営化の進展状況について、2020年8月から2021年3月の期間、実地調査によるデータ収集を行ってきた。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大が続くなかで、特に警戒が続く高齢者向けの居住型介護施設は外部からの訪問者を受け入れ停止している。そこで、行政の在宅介護チームにおける組織改革と効率化、そして民営企業への外注が現場にもたらした影響について調査を行った。また、NGOによる親族介護者支援活動を参与観察し、参加した家族介護者に対するインタビューを実施した。 こうした調査から見えてきたのは、従来は地域ごとの多様性に対応する形でサービスを提供してきた行政が、技術や市場の影響下において徐々に標準化されていく様態である。一方で、親族介護においては様々な関係性や生活状況に応じたケアに対して複数のチャンネルからの支援が行われていることが見えてきた。このように、民営化と私事化という二つのプライベートな領域において、それぞれ標準化と多様化という逆のベクトルの変化が進行していることがわかってきた。 以上のような調査結果を踏まえ、研究成果として、国際学会における二回の口頭発表、一冊への分担執筆を行った。European Association of Social Anthropologists Associationの第16回研究大会では、在宅高齢者に対する緊急通報サービスの有料化について発表を行った。また、International Union of Anthropological and Ethnological Sciencesの研究大会および、分担執筆を行った編著においては、高齢者の転居と次世代への相続を通じて世代間の相互扶助について考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大によって、フィンランドでは医療・福祉施設への訪問が著しく制限される状況が続いている。また、リモートワーキングが推奨されている状況において、営利企業を訪問することも難しい。企業の本社が集中する都市部において新型コロナウイルスの感染率が高いことも、調査・研究の大きな障害となっている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年9月までの間は、新型コロナウイルスの感染状況を随時確認しつつ、状況の落ち着いているタイミングを見計らって、調査を実施していきたい。また、場合によってはオンライン会議ツールを利用したインタビューなども実施していく。 どのような調査データを集めることができるか不透明な部分はあるが、、2021年度の後期は、9月時点までに収集できたデータをもとに分析し、研究業績につなげていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、非常に限定的な範囲でしか実地調査を行うことができなかったため。
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