研究課題
フィンランドの高齢者ケア制度の私事化/民営化の進展状況について、2023年8月及び2024年2月~3月の期間、実地調査によるデータ収集を行った。具体的には、SOTE改革後による地域統合が、自治体レベルの在宅介護サービス現場にもたらした影響について調査を行った。また、高齢者ケアに関わる技術を広域自治体に提供する私企業に対し、公益性とケアの概念についてのインタビューを行った。さらに、行政による公的サービスの提供範囲を確認するため、自治体の都市計画部門でのインタビューを行った。こうした調査から見えてきたのは、高齢者ケアをめぐる公私の境界については、交通インフラや住宅計画のような、高齢者ケア制度とは直接かかわらない要因も決定に関わっているという事実である。さらに、高齢者ケアに関わる家族の私事化、公的制度の民営化は、利用者/ケアの受け手である高齢者自身だけではなく、家族や親族、ケアワーカーや管理職といった高齢者を取り巻く人々の価値観や行動論理にも変容を迫っているということが明らかになった。以上の調査結果を踏まえ、日本文化人類学会第57回研究大会では、「即興と逸脱:フィンランドの訪問介護サービスにおけるマネジリアリズムの社会技術的編成」と題する個人発表を行い、民営化が訪問介護サービスの現場に与える影響について考察した。また、AGENET conferenceではタンペレ大学のオウティ・ヨランキ氏と“More than Home: The collective practice around Finnish summer cottages as a critical element in kinning/de-kinning”と題する発表を行い、私事化の進展する領域について住宅の視点から考察した。
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Archives of Gerontology and Geriatrics
巻: 116 ページ: 105137~105137
10.1016/j.archger.2023.105137