研究課題/領域番号 |
19K13459
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
増木 優衣 筑波大学, 人文社会系, 特別研究員(PD) (80828442)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | インド / ダリト / サニテーション / 清掃人カースト / 公衆衛生 |
研究実績の概要 |
本研究は、インドにおける被差別民である不可触民(以下ダリト)である、「清掃人カースト」と呼ばれる人びとの属するコミュニティーの、歴史的な変容について明らかにしようと試みるものである。具体的には、植民地期から現代にいたるまで、インド国内の地域社会において公衆衛生政策(とりわけサニテーション政策)が展開されるなかで、彼ら自身により、清掃業やそれを取り巻くステレオタイプが積極的に受容されてきた過程について考えるものである。 2022年度(令和4年度)は、インドにおける清掃人カースト・コミュニティーの変容について、これまでの研究をもとに、主に成果の発信を行った。2010年代半ば以降、インド国内では中央政府主導の公衆衛生キャンペーンである「クリーン・インディア・ミッション」を主軸としたサニテーション政策が加速し、地方自治体において清掃人の増員や清掃用設備の供与が促進された。その過程では、清掃職の門戸が清掃人カースト以外にも開放されることになったが、その際の清掃人カースト出身者の対応について検討した。それとともに、清掃人カースト出身者が、地域社会で不浄かつ不潔とみなされ忌避されてきた清掃業を、自らの生存基盤、またアイデンティティとして積極的に受容してきた歴史的過程について考察を行った。上記の成果の一部は、単著『ヴァールミーキはどこへ行けばよいのか――現代インドの清掃人カースト差別と公衆衛生の民族誌』(春風社)のなかで発表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究成果の発表に関しては、ある程度当初の予定に沿った進展であるといえる。しかし、現地調査については大幅な遅れがみられるため、区分(3)を選択するに至った。これは、インドにおける新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、同国への長期渡航が困難となり、当初の研究計画で予定していた、本研究を遂行するうえで不可欠となる中長期にわたる現地調査を通じた新たな資料収集、および現地調査(フィールドワーク)によるデータ収集の双方とも断念せざるを得なかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は前年度に引き続き、インドにおける新型コロナウイルス感染症拡大のため渡印が感染拡大前と比較して困難であったものの、2023年度においては、状況はいくらか緩和されつつある。そのため、当初の研究計画で予定していた、インドにおける現地調査(フィールドワーク)の実施を予定している。並行して、これまでに収集したデータや日本国内で入手可能なデータを用いた分析を行い、主に日本国内において研究成果の発信を行うことも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究中断および新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、インド渡航が困難であったため、当初旅費として申請していた助成金を使用できなくなり、次年度使用額が生じた。次年度に渡航する際、旅費に充当する予定である。また、研究のための物品費、あるいは研究成果発表の際の論文校閲費等にも使用する予定である。
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