モティリティとモビリティを区別し、モティリティの差異とジェンダー役割との関連を指摘した点は、移動技術の発展・普及とともに議論が高まってきた「移動と社会」というテーマに狩猟採集民研究を結び付けただけでなく、定住ではなく遊動生活を送ってきた人々への移動技術の影響という点において意義がある。 またこれまで、広く食物を分かち合い、拡張的に関係を築く平等主義であると論じられてきた狩猟採集民だが、遊動性と集団メンバーの流動性の低下とともに、特定の人々の関係が強化され広く平等な関係が構築されているわけではないことが明らかになり、現在の狩猟採集民の実態を示した点においても意義がある。
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