最終年度においては、オロミア州アルシ西県ドドラ地域においてアルシ社会のガダ・システムの実践として慣習法廷の調査をおこなった。すべての実践は映像として記録をおこなった。 研究機関の全体においては、2020年度において内戦とCovid-19の影響によってアルシ全体でのガダの再興運動が中断されるまでは、ガダの再興運動に関する人々の実践や言説に関して参与観察および聞き取りをおこない、その成果を「アルシ・ディレンマ:エチオピア・アルシ社会におけるガダ再興運動が生み出す抗争と創造」として、『文化人類学』において出版を行った。 Covid-19と内戦の影響が落ち着いた2021年度以降から現在においても、エチオピアでは政情不安が続いており、アルシ全体でのガダの再興運動に大きな動きはなかったので、アルシにおけるガダ・システムがいかなるものであったのか、その歴史や政治・社会構造に関して、口頭伝承や歴史記憶、ガダの役職者たちの系譜を調査することで明らかにしていった。また、大きく変容してきたアルシのガダの現在の実践に関して、ガダの実践の一つである慣習法廷での観察と聞き取りを中心に調査を行ってきた。その成果は、国内外で講演や学会において発表をおこなった。 現在、本科研をとおして収集した、アルシの人々のガダに関する歴史記憶、口頭伝承、および慣習法廷に関するデータをまとめてガダ・システムにおける統治と紛争処理の構造や実践、独特の裁定技法に関する論考をまとめている。
|