研究実績の概要 |
本研究は、現代インドネシア・バリにおける観光開発反対運動を対象とし、観光地に生きる人びとが生活世界を席巻する観光をめぐる問題に今日どう関与しようとしているのかを、民族誌的に明らかにすることを目的としている。2012年以降、バリ島で活発化しているブノア湾埋め立て反対運動(For Bali)は、ポスト・スハルト期の観光開発反対運動のなかで最も大規模に行われている運動である。とりわけ、本研究では同運動が「市民」による運動として強調されている側面に注目し、「市民であることの意識化」がどのように人びとの運動への関与に結び付き、運動が立ち上がっているのかを明らかにすることで、ポスト・スハルト期インドネシアで進展した民主化によるバリにおける社会運動への影響を探究する。 初年度である令和元年は、まず5月初旬にグローバル・ツーリズムのなかのバリ観光の位置づけを把握するため、バリで開催された国際観光研究アカデミー主催の国際会議「BALI INTERNATIONAL TOURISM CONGRESS ON GLOBAL TOURISM TRENDS AND COMPETITIVENESS: NEW MARKETS AND SUSTAINABILITY」に参加した。また、9月には約10日間複数のNGO、アクティビストたちや現地研究者らを対象に聞き取り調査を実施し、運動の進捗や運動への参加状況について全体像を把握することを試みた。この間、バリ州立図書館において資料収集も実施した。この結果、①運動の展開において、NGOアクティビストと芸術家たちの連携が重要な役割を持っていること、②運動への関わりにNGOによって予想以上に差が出てきていることなどが分かった。 また、関連する研究成果として、令和2年2月に和歌山大学にて開催されたThe 2nd Critical Tourism Studies Asia Pacific Conferenceにおいて、「Tourism Disasters’ and Community Resilience in the World Heritage Site of Bali, Indonesia」という口頭発表を行った。
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