研究課題/領域番号 |
19K13471
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ダンス / スポーツ / 身体運動 / 生成変化 / 情動 / パフォーマンス / 舞踊 / 舞踏 |
研究実績の概要 |
2022年度は、舞踏やコンテンポラリーダンスなどの、他の身体表現とのコラボレーションを実施し、芸術(アート)としてのポールダンスを検討しました。本研究でいう芸術は、人類学と同様に、わたしたちの世界を多元化し、わたしたちの世界に潜在的な可能性を指し示すものとする(『美術手帖』2018年6月号参照)。まず、暗黒舞踏のパフォーマンス集団とコラボレーション企画をして、その研究結果を2022年6月12日に北海道大学の学術交流会館で発表しました。その発表形態は『頭上のわたし』という公演で、学生や研究者、一般人などの来客が187人ほど集まりました。ここで、ポールダンスという形態を通して大学という環境で暗黒舞踏を提示する可能性と限界がわかりました。また、2023年1月18日に「Dance Live Session Ward」という札幌のコンテンポラリー・ダンサーの企画に加わって、そこで本研究の考察をポールダンスで示すことができました。二つのイベントは、ポールダンスの芸術的な側面を検討しつつ、その途中経過を観客に示すものでした。つまり、本研究では、ポールダンスは研究の調査対象でありながら、調査方法でもあり、さらに調査結果の発表形態の一つにできることがわかりました。本研究は人々の感じ取る気持ちすなわち情動によって人々がどのように突き動かされるのかということを考えて、このことを学術的な形で伝える目的を持っていますが、そのために、情動を言語化するのみならず、パフォーマンスを用いる発表も学術的な発表形体として認める必要性があると考えました。この見解をもって、2022年7月30日の京都人類学研究会七月季節例会にて「人類学を踊る/踊る人類学」という研究発表の中、話ながら踊ることで実践と思考法としての踊りを提示するという、斬新な発表形態で視聴者に踊りの学術的な意義を提示しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ダンスの業界では濃厚接触を避けられない場合があるので、コロナ禍のご時世のため、ポールダンスの研究が予定通りに進まないことがありました。
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今後の研究の推進方策 |
全体的に、ポールダンスは対象のみならず、方法であること、そして研究発表の一つの形態になる可能性を多角的に検討します。昨年度はダンス公演という特集の場で披露することが多かったですが、今年年度はもっと私の研究そして教育活動のあらゆる側面に持ち込むことで、日常における身体運動の役割、そして身体と物質的なものとの関係から立ち現れる可能性を示します。とくに、身体運動を通して言語化では到達できない思考法を明らかにし、さらに外部のことのみならず個々が自分のジェンダーや官能性などの身体的に存在していることへの洞察を与えることを目指しています。 そして、様々なジェンダーのポールダンサーが多様な場所、多様な形でポールダンスを披露することを調査して、論文として2023年度に出版する予定です。このことによって、スポーツ、アート、エンターテインメントの諸制度はダンサーにどれほど影響を与えているのか、あるいはダンサー自身はその制度をどれほど変えられるのかという、ダンサーの身体的なエイジェンシーを検討することになります。 また、ポールダンスの実施では多くの場合、ポール上に止まるために身体の露出が必要になります。アメリカと日本のストリップティーズに関する選考文献をレビューし、2023年度に出版する予定です。 あと、調査中に多々の高齢者が多様なポールダンス活動を実施していることがわかりました。この現象を調査し、新体制という切り口から老いとジェンダーへの考察を深める予定です。 あと、本研究の中で研究者が目の当たりにした性的なハラスメントを一つの研究課題にしたいです。その課題は、なぜ女性の踊る体はハラスメントに合うほど蔑視されるのかという重要な問題です。ポールダンスやジェンダーへの固定観念を検討して深く考察することで、様々な社会的背景を持つ方々への公平性を担保できる社会のあり方を構想して提示することを目標にしています。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍などの理由により、予定通りに研究が進まなかったことがありましたので、できなかった研究調査を実施する予定です。 このため、次年度の研究調査に使用する予定です。
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