• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

日本と韓国におけるヨーグルト食文化の比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K13473
研究機関立命館大学

研究代表者

YOTOVA Maria  立命館大学, 食マネジメント学部, 准教授 (80733683)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードヨーグルト / プロバイオティクス / マーケティング / ブランドイメージ / 日本
研究実績の概要

2020年度は、乳食文化の圏外にある東アジア・東南アジア地域の乳製品の受容と定着に関する文献調査を進めると同時に、ZoomやSNSを用いて日本と韓国の研究者や企業関係者、そして一般消費者に対して、ヨーグルトなどの乳製品の生産と消費についてインタビュー調査を行った。そこから見えたことは、新型コロナウイルス感染症が世界中で蔓延する中で、消費者の健康意識が高まり、免疫効果を訴求した機能性食品のニーズが拡大し、特にヨーグルトや乳酸菌飲料に対する感染予防対策の期待が高まっていることである。それに伴い、ヨーグルトの免疫効果の解明を目指す研究が増加し、乳酸菌の可能性がさらに広がりを見せている。しかしその一方で、企業によるその研究結果の利用次第では、自社製品の広告が消費者に対して過大な期待をもたらす恐れがあるため、研究データの提示の仕方にこれまで以上に慎重な姿勢が求められるようになってきている。実際、韓国の大手乳業会社は、自社のプロバイオティクス製品に新型コロナウイルスを抑制する効果があるという研究結果を発表したが、誇大広告の疑いがあるとして行政処分を受ける事態となった。そこで、消費者の信頼や期待を裏切ることによって、企業のブランドイメージが大きく毀損する結果となった。そのリスクを防ぐためにも、より一層企業の倫理観を持った広報活動が必要となってきているのである。
このような状況下において、確実に顧客との信頼関係を築きブランドの価値を高めている日本の中小企業のマーケティング戦略について、International Union of Anthropological and Ethnological Sciences の学会で報告を行い、これまでの研究成果一部をまとめている。本年度の実績で最も重要なものは、和食文化学会での研究発表および『立命館食科学研究』第4 号への論文の投稿である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本研究の目的は、乳食文化圏外にある東アジアの国の視点から現代社会における乳製品の意味づけについて論じることであり、これまでの日本と韓国の調査に基づいて、企業のマーケティング戦略や消費者の嗜好について発表・投稿するいくつかの機会があった。また、文化人類学・経営人類学という研究領域において人的ネットワークが広がったこともあり、それは国内外の研究者との連携で近現代日本における乳食文化の解明を目的としたオンライン研究会の定期開催につながった。
しかしその一方で、乳食文化圏外にある東アジア・東南アジアの全体を論じるには、日本と韓国だけはなく、タイや上海などの「ブルガリアヨーグルト」の海外進出先での調査も必要である。また、「ブルガリア」ブランド以外のヨーグルトや発酵乳、新型コロナウイルスの感染流行以降に好調に推移しているドリンクヨーグルトや乳酸菌飲料の摂取・利用状況を含めた、さらに広い視点からのフィールド調査が必要である。ところが、2020年度における新型コロナウイルス感染症の蔓延により、現地調査や国際シンポジウムへの参加が難しくなった。実際に、2020年に予定していたソウル調査と上海調査について、それぞれの水際対策の強化のため渡航が難しくなり、延期を余儀なくされることとなった。また、2020年12月にブルガリア科学アカデミー主催の国際シンポジウムで報告を行う予定であったが、ブルガリアが感染拡大期の真っただ中にあったことから、シンポジウムの実施が中止となった。このような状況のなかで、2020年度において大幅な遅れが発生しており、今後、本研究を進めていくうえでは状況に応じた対応が必要である。

今後の研究の推進方策

本研究が完了する2021年度は、論文執筆などの成果発表を念頭に、2019年度および2020年度に行った研究調査を継続し、より進化させる年度になる。現在、2021年11月9日ー13日の間、メキシコで開かれるInternational Union of Anthropological and Ethnological Sciences(IUAES)の大会において共同主催のパネルを予定しているが、渡航が難しい場合はオンライン実施となる見通しである。
研究面において、企業の宣伝やマーケティング戦略とともに、乳製品の普及と学校給食にかかわる国家政策との関係性、特定保健用食品・機能性表示食品をめぐる認定制度に対する消費者の認識、ヨーグルトの価値形成に乳酸菌をめぐる科学研究が及ぼす影響などに注目しながら、乳製品をめぐる国際的フィールド調査を継続的に行う予定である。ところが、現在、国内外において新型コロナウイルス感染症の蔓延が続いており、各国の水際対策の緩和の見通しが立っていない現状を鑑みれば、現地でのフィールド調査の延期(場合によっては中止)はやむを得ない選択になると考えられる。その対応措置として、現地でのフィールドワークを見直し、オンライン調査に切り替える必要が生じると考えられる。
その場合は、これまで築き上げてきた研究者ネットワークを駆使して、オンライン調査に適した質問票を作成したうえで、インフォーマントの協力を得るように努める。また、オンライン会議ツールなどを利用しながら、現地の食文化・経営人類学研究者との意見交換・学術交流をはかり、今後の乳食文化をめぐる国際的な連携・共同研究活動へと結びつけていきたいと考える。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の流行により、2020年度に予定していた現地調査および国際シンポジウムが中止となり、2021年に繰り越されたため。2020年度において中止となった韓国および上海のフィールド調査について、2022年2月-3月に実施する予定である。現地に赴くことが難しい場合は、オンライン調査に変更する。2020年の延期されたブルガリアの国際シンポジウムについては、2021年10月に実施する見通しが出ており、日本と韓国におけるヨーグルトの手作り文化について取り上げ、「ヨーグルトをめぐる新たな言説の生成」をテーマとした報告を行う予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 「ブルガリアにおける外食文化の形成とその変容―社会主義期からコロナ期に至るまで―」2021

    • 著者名/発表者名
      マリア・ヨトヴァ
    • 雑誌名

      『立命館食科学研究』

      巻: 4 ページ: 155164

  • [雑誌論文] 「日本とブルガリアを架橋するヨーグルト言説」2020

    • 著者名/発表者名
      マリア・ヨトヴァ
    • 雑誌名

      『言説立命館言語文化研究』

      巻: 32 ページ: 103-110

  • [学会発表] “Kefir, fermented milk beyond yogurt”: Marketing culture and expert knowledge in a Japanese company2021

    • 著者名/発表者名
      Maria Yotova
    • 学会等名
      International Union of Anthropological and Ethnological Sciences(IUAES)
    • 国際学会
  • [学会発表] 「ブルガリアにおける外食文化の変容―日本食の受容を事例として―」2021

    • 著者名/発表者名
      マリア・ヨトヴァ
    • 学会等名
      和食文化学会第3回研究大会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi