研究課題/領域番号 |
19K13473
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
YOTOVA Maria 立命館大学, 食マネジメント学部, 准教授 (80733683)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヨーグルト / 乳食文化 / 米食文化圏 / 企業戦略 / 日本 / 韓国 |
研究実績の概要 |
2021年度は日本と韓国を中心に、米食文化圏における乳製品の受容と定着に関する研究調査を進めた。日本では、全国の乳業メーカー、自治体や酪農家などから成るネットワーク「ヨグネット」を利用して、乳製品業界の動向と現状の解明に努めた。特に「ご当地ヨーグルト」という存在に着目し、このような独自性の高い製品を製造・販売するメーカーを見学し、経営体制やブランド戦略について情報収集を行った。また、全国のヨーグルトサミットに注目しながら、開催されるようになった背景や主催者などの活動について、発酵ツーリズムとの関係性という視点から調査を進めた。そこから見えたことは、ヨーグルトサミットがご当地ヨーグルトの認知拡大やメーカーの連携・発信力を強化し、酪農活性化や地域再生に貢献していることである。つまり、それは単なる一過性の商業イベントではなく、重層的に機能する長期目線の取り組みとして展開してきたのである。 他方、韓国の乳製品に関する調査では、国民的飲料となったバナナ牛乳をはじめとする加工乳に着目し、韓国と日本の類似点や乳受容実態の特徴を解明することを目的とした。アンケートおよび聞き取り調査に基づいて、両国においても乳・乳製品が栄養食品として受け止められており、健康にいいという共通認識が確認された。しかしながら、韓国では加工乳が段違いに普及しており、牛乳を「おやつ」や「デザート」と位置づける人が非常に多い点において日本と大きく異なっている傾向が見られた。 このように、両国における乳受容実態について比較文化の視点から取り上げ、国際会議アジア食文化会議(Asia Food Study Conference)で研究発表を行い、これまでの若手研究の成果一部をまとめている。本年度の実績で最も重要なものは、『日本家政学会誌』第72号および『立命館食科学研究』第7 号への共著論文の投稿である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の目的は、乳食文化圏外にある東アジアの国の視点から現代社会における乳製品の意味づけについて論じることであり、これまでの日本と韓国の調査に基づいて、企業のブランド戦略や消費者の嗜好性、乳受容実態の特徴について、比較文化の視点から発表・投稿するいくつかの機会があった。また、乳食文化という研究領域や乳製品業界において人的ネットワークが広がったこともあり、それは業界関係者や研究者との連携で近現代日本における乳食文化の解明を目的としたオンライン・プラットフォームの立ち上げやワークショップの定期開催につながった。 しかしその一方で、乳食文化圏外にある東アジア・東南アジアの全体を論じるには、日本と韓国だけはなく、タイや上海などの「ブルガリアヨーグルト」の海外進出先での調査も必要である。また、「ご当地ヨーグルト」など、大手メーカーのブランド以外の乳製品や新型コロナウイルスの感染流行以降に好調に推移しているプロバイオティクス・ヨーグルトや乳酸菌飲料の消費者側の利用状況・企業のマーケティング戦略を含めた、さらに広い視点からの研究調査が必要である。ところが、2021年度における新型コロナウイルス感染症の蔓延により、現地でのフィールドワークが難しくなった。実際に、2021年に予定していたソウル調査と上海調査について、それぞれの水際対策の強化のため渡航が難しくなり、延期を余儀なくされることとなった。また、2021年11月にブルガリア科学アカデミー主催の国際シンポジウムで報告を行う予定であったが、ブルガリアが感染拡大期の真っただ中にあったことから、シンポジウムの実施が中止となった。このような状況のなかで、2021年度において大幅な遅れが発生しており、今後、本研究を進めていくうえでは状況に応じた対応が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究が完了する2022年度は、論文執筆などの成果発表を念頭に、これまで行った研究調査を継続し、より進化させる年度になる。現在、2022年7月26日~29日の間、アイルランドで開催されるEuropean Association of Social Anthropologist (EASA)の 第17回会議にオンラインで参加する予定である。他方、2022年5月25日~31日の間、サンクトペテルブルクで開かれる予定であったInternational Union of Anthropological and Ethnological Sciences(IUAES)の大会がウクライナ情勢の影響で中止となり、そこで予定していたパネル開催および研究発表を断念せざるを得なくなった。 研究面において、乳製品の普及にかかわる企業のマーケティング戦略と国家政策との関係性、特定保健用食品・機能性表示食品をめぐる認定制度に対する消費者の認識、「ご当地ヨーグルト」の価値形成に関する自治体やメーカーの動きに注目しながら、乳製品をめぐるフィールドワーク調査を継続的に行う予定である。現在、新型コロナウイルス感染症に関わる各国の水際対策が緩和される見通しであり、現地でのフィールド調査は可能になると考えられる。 万が一延期や中止になった場合はその対応措置として、現地でのフィールドワークを見直し、オンライン調査に切り替える必要が生じると考えられる。その際には、これまで築き上げてきた研究者ネットワークを駆使して、オンライン調査に適した質問票を作成したうえで、インフォーマントの協力を得るように努める。また、オンライン会議ツールなどを利用しながら、現地の研究者や業界関係者との意見交換・学術交流をはかり、今後の乳食文化をめぐる国際的な連携・共同研究活動へと結びつけていきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、2021年に予定していた現地調査およびブルガリア科学アカデミー主催の国際シンポジウムが中止となり、2022年に繰り越されたため。2021年度において中止となった韓国のフィールド調査について、2022年8月に実施する予定である。現地に赴くことが難しい場合は、オンライン調査に変更する。国際シンポジウムについては、2022年3月に延期となる見通しが出ており、日本のご当地ヨーグルトをめぐる研究発表を行う予定である。
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