研究課題/領域番号 |
19K13477
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
金 セッピョル 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 特任助教 (00791310)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 葬儀 / 映像人類学 / アート / 表象 |
研究実績の概要 |
●金セッピョル・地主麻衣子2021『葬いとカメラ』左右社、出版 :昨年度から編集に取り掛かっていた書籍を、6月に刊行した。本書は、「葬い」という行為と「葬いを映すこと」をテーマに、応募者をはじめ、共著者であるアーティストの地主麻衣子、在日コリアンの美術家である鄭梨愛による映像作品などを取り上げ、制作者本人を交えながら、領域横断的な観点から様々な議論を行なっている。議論の中で持ち上がった主なトピックは、①撮影する側・される側の立場性、②「死」を「撮る」という行為に潜む暴力性と欲望、③「死」を取り巻くマジョリティとマイノリティの関係性、④非論理性をはらむ芸術的表象の可能性の4点である。以上の視点をもとに、現代の葬儀研究における「映すこと」の意義と今後の展望について論じている。
●韓国の無縁故者葬儀に関する調査 :11月に韓国・ソウル市で無縁故者葬儀を担っている二つの市民団体を訪問し、聞き取り調査を行った。また、2件の無縁故者葬儀に参列し、参与観察を行った。これらの市民団体の活動方針においても儒教的な死生観の影響が色濃く見られ、韓国の葬儀の変化においては観念的側面が遅れていることを再確認できた。
●大邱・慶北出身女性たちのライフヒストリー調査 :本研究の調査対象の一つである葬儀保存運動は、主に大邱・慶北地域を舞台とする。水際対策の影響で、今年度もこの地域を訪れることはできなかったが、この地域出身の女性たちにオンラインでライフヒストリー調査を行った。この調査を通して、大邱・京北地域の近現代史を個人の視点で見直すと共に、儒教の影響が強いこの地域で、儒教的ライフサイクルの周辺部に位置づけられる女性たちが、いかに死と葬儀を経験したかについて捉えようとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水際対策の影響で十分な調査の時間が取れていない状況である。オンラインでの調査を試みているが、調査対象に高齢者が多いため、難航している。
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今後の研究の推進方策 |
日韓の両国において水際対策が緩和されているため、長期的な現地調査を予定している。大邱・慶北地域における喪輿保存運動団体の調査や、該当村落調査を行う予定である。また、全国に散在する喪輿歌保存会の訪問調査を継続する。 一方、葬儀革新運動については、韓国葬礼文化振興院や行政関係者に対して聞き取り調査を行い、運動全体の概況を把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
水際対策の影響で韓国の調査地にほとんど行けなかったため、残額が生じた。 次年度は水際対策の緩和などで調査地にいける目処がついたので、主に旅費として執行する予定である。
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