研究実績の概要 |
本研究の目的は、南部アフリカにおける人びとの「固有の会計方法」を明らかにすることにある。具体的には、レソト王国におけるジンバブエ人出稼ぎ移民の行商活動について、彼ら独自の会計方法(価値の計量、財産管理、取引記録)に焦点を当て人類学的調査をおこない、その結果を近代会計や監査制度と比較する。 今年度は(1)研究発表で、記録的ハイパー・インフレから10年、再び高インフレに見舞われたジンバブエの貨幣状況を考察した(a)。また、2008年のハイパー・インフレ期のジンバブエにおける人々の貨幣の使用法を会計学の観点を踏まえて再考察した(b)。(2)文献調査で、貨幣やインフレにかんする経済人類学の文献を講読した。F. Neiburgらの南米インフレ経済下での貨幣使用、およびB. Maurerのモバイル・マネーにかんする研究から、贈与交換という枠組みではない方法で貨幣使用の具体的場面や文脈をより考察する方法を模索していく必要があると考えている。 a) Sibanda, M., S. Gukurume & M. Hayakawa (2021). The parallel money market and money changers’ resilience: Case of Masvingo and Harare, Zimbabwe. In M. Takahashi et al. (eds.) , Development and subsistence in globalising Africa (pp. 375-406). Langaa RPCIG: Cameroon. b) 早川真悠(2021)「ハイパー・インフレ下の人びとの会計――多通貨・多尺度に着目して」出口正之・藤井秀樹(編)『会計学と人類学のトランスフォーマティブ研究』(pp.62-85)、清水弘文堂。
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