本研究はイギリス、特にイングランドにおける法学を対象として、中世の法文献がいかに近代以降に影響を及ぼし得たのかを検討することを焦点とした。その中で本研究では『ブラクトン』と通称される法文献を主たる研究対象に置いた。本書の検討から、内縁女性や非嫡出子が固有の権利を持つこと、その権利が侵害された際には救済対象となることを『ブラクトン』が認めている点が明らかになった。理論的要素においてローマ法が下敷きとなる一方で、実践的要素である訴訟手続上の扱いにおいてイングランド法が優先する。こうした交錯が法文献という一体化で登場したは、法の継受または法の移植とその後の経過における史料的価値を示すものと言える。
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