研究課題/領域番号 |
19K13486
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中田 裕子 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 特任助教 (40802369)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | foreclosure / mortgage / foreclosure crisis / CARES Act |
研究実績の概要 |
2020年度は、当初予定していたアメリカおよびイギリスでの現地調査研究ができなかったため、一部、研究手法を検討し直した。当初予定されていたアメリカ・イギリスの比較研究は、担保権実行危機(フォークロージャー・クライシス)におけるモーゲージの独自の意味について明らかにするものであったが、それらは日本からアクセス可能なソースのみを用いて検討するに留めた。 新型コロナウイルス流布に伴い、アメリカで実施されたフォークロージャー制限という本研究についての新たな課題が生まれた。そのため、研究手法を英米の横断的比較からアメリカにおけるリーマンショックとコロナショックにおけるフォークロージャー規制という縦断的比較へとシフトさせることにした。具体的には、コロナウイルス流行に伴うフォークロージャーの法規制と実相を新たな研究対象として追加し、法規制の在り方と効果について、その法的含意を明らかにした。 春先以降、アメリカで猛威を振るい始めた新型コロナウイルスに対処すべく、トランプ前大統領の下で、議会が制定したCoronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act(以下、CARES Act)が施行された。本連邦法は、コロナ禍において人々に金銭的支援を行うことが主たる内容である。本法内で、住宅ローン実行手続きモラトリアム(foreclosure moratorium)が規定されており、連邦関連モーゲージ(federal-related mortgage、主に連邦保証付きのモーゲージ証券)については、住宅ローンの支払い遅延が発生したとしてもフォークロージャーモラトリアムが与えられる。CARES Actによって与えられる住宅の保証はコロナ禍での安心感を与え、2009年のような事態にはならなかった。この点は、2021年度比較法学会にて報告予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
主たる理由は新型コロナウイルスの流布によって、本来予定していた研究活動の一部が制限されたことによる。第一に、2020年度に予定していたアメリカ現地資料収集活動が渡航制限措置により不可能となった。第二に、2020年度比較法学会で予定していた本研究に関する個別報告が、学術大会自体が中止になったため実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も新型コロナウイルス流行状況は続くと仮定し、現地調査実施の可能性が低いとの認識の下、研究手法を転換する予定である。 英米の横断的手法については、その方法を放棄せずに一部改めることとする。具体的には、アメリカにおける2009年のリーマンショック時の法規制と2020年の新型コロナウイルス時の法規制の在り方を比較する。連邦法規制を軸にその内容と実体について明らかにするとともに、バイデン大統領の新政策を新たに考慮に入れることとする。また、EU離脱前のイギリスにおいての世界金融危機時の対応と、EU離脱後のイギリスにおける新型コロナウイルスへの対応という点を掘り下げる。縦断的及び横断的な比較を行うことで、フォークロージャーの法規制の在り方について再検討したい。 この手法を用いて、住宅ローンに端を発した金融危機を今後引き起こさないための法規制の在り方とその効果という本研究の主たる問いについて、法規制の観点からの答えを出したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由は、新型コロナウイルスの流行に伴い、海外調査費及び国内研究旅費を執行することができなかったためである。 2021年度も同様に、旅費等を執行することができない可能性を考慮に入れ、海外からの資料の取り寄せやネットでの資料を積極的に利用することで現地調査に代わる手段とし、資料収集の補完に務めたい。また、本研究の研究成果の公表を日本語だけでなく英語で行い海外に発信することを視野に入れて、論文投稿を含めた成果発表を行っていく予定であり、そちらへの執行に回す予定である。
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