研究課題/領域番号 |
19K13486
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中田 裕子 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 特任助教 (40802369)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | モーゲージ / フォークロージャー / 住宅ローン / 担保権実行 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、住宅ローンに起因する金融危機を今後引き起こさないようにするための 法規制の在り方を探求することである。とりわけ、2008年に起こったリーマンショック時には、モーゲージの証券化では結局リスク回避できずに、担保権実行が頻発し、これに対して、アメリカでは2つの側面から規制が行われたが、これが十分でないという点がフォークロージャー・クライシス(担保権実行危機)として顕在化している。 その後、新型コロナウイルスの世界的流行において、上記の通り、アメリカではモーゲージの証券化では対応できないことが既に理解されていたため、2020年以降はフォークロージャー・モラトリアムを行うことで、上記危機は一時的には回避できたように思われている。しかしながら、2022年度、モラトリアム終了後に、担保権実行の件数が増加していることが観察できた。そこで2022年度は、州および担保権実行の形態ごとに、その実行件数の推移を集計し、さらには、その後の不動産が空き家(REO物件)となってしまっていないかについて調査をオンラインデータを利用して検討した。なお、REO物件にならずに、二次市場に出回っているものについては、研究の対象から外している。 さらに、担保権実行に際して、州ごとの規制について検討した。そこでは、州によっては裁判内手続による担保権実行は行わない(non-judicial)が、何らかの形で裁判所が関与してているということが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究に関する報告等を海外で行う予定であったが、コロナ禍により延期されたものもあり、また、自身も罹患するなどして海外渡航が困難であったため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は本研究の最終年度とし、成果報告をまとめる予定である。2022年度までの間に、アメリカのモーゲージにおける歴史、さらにはアメリカ国内のモーゲージの差異とそれに起因するフォークロージャー手続の帰結については検討した。さらに、2020年に生じたコロナショックと合わせる形で、フォークロージャー手続に対する規制やその金融規制と消費者保護という点についても検討してきた。 そこで、手法として掲げていたイギリスのモーゲージ及びその担保権実行方法との比較について、本年度取り組むこととする。とりわけ、債権者の満足という点について検討したい。元々は、アメリカが用いているフォークロージャー手続が行われていたが、その後実務ではほとんど行われず、裁判所が関与することなく担保権実行が行われてる。それでも、債権者の満足が得られているという点からも、裁判外手続き(non-judicial procedure)が有効に機能しているということが考えられる。債権者の満足という視点から両制度を比較することで、フォークロージャー手続の実質的意義について掘り下げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度、本来は海外での研究報告を検討しており、その折には同時に調査へも行く予定であったので、海外旅費としての支出を予定していたが、その学会自体が延期となり、赴くことができなかった。 今年度は渡航制限等も全て撤廃されるため、アメリカおよびイギリスでの調査を予定している。
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