本研究は、後期スコラ学派から近世自然法論によって展開された私法理論に着目した。近世自然法論については、ローマ法およびこれを継受した普通法学の成果を体系化としたと評され、個々の法制度はローマ法との比較によって探求されてきた。しかし、近世自然法論者は、ローマ法の訴権中心の思考から独立して、独自の思考枠組みに基づいて私法理論を確立したため、ローマ法外部で展開された思考枠組みに目を向けなければならない。ゆえに、後期スコラ学派から近世自然法論によって展開された私法理論を考察する本研究は、ローマ法の訴権の体系から脱却した近代法典の編纂にも必要不可欠な法の体系化の一端の解明にも資するという点で意義がある。
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