研究課題/領域番号 |
19K13492
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研究機関 | 長野県立大学 |
研究代表者 |
宮森 征司 長野県立大学, グローバルマネジメント学部, 助教 (50823390)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 行政法 / 公私協働 / 行政組織 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、わが国においては、公的主体と私的主体が共同で設立・参加する公私協働組織(第三セクター等)のガバナンスに関する法制度が十分に整備されておらず、これに関係する議論も具体化していないという問題意識に立脚し、対応する議論の蓄積が豊富なドイツ法に検討の手掛かりを求めつつ、比較法的な検討を行うものである。 本研究課題は、法理論・法制度に関する研究と、実態を把握するためのヒアリング調査から構成される。2019年度においては、日独の法理論と法制度の比較研究を中心に行い、その成果を学術論文(2本)の形で公表した。 まず、「自治体の組織選択裁量」(一橋法学18巻2号)では、ドイツにおいては、自治体による組織形式選択の局面において、「私法への逃避」の観点を手掛かりとして、私法上の組織形式を選択が公的主体であるゲマインデが責任を負うべき問題として議論されてきてきた経緯があり、現在ではこれが組織選択裁量の問題として議論され、各州のゲマインデ法においてもこの考え方に対応する法制度が具体化されていることを明らかにした。その上で、わが国においても、自治体による組織選択を裁量権行使の問題として捉えるべきではないかとの示唆を導いた。 次に、「自治体事業の基礎的法枠組みの歴史的形成:自治体事業の区別に着目して」(行政法研究32号)では、ドイツのゲマインデ法における自治体事業の法的区別(経済的企業と非経済的企業)に注目して、この区別がいかなる意味を持つのか、法理論及び法制度の歴史的な展開について検討を行った。そして、この区別の背後には、先行研究が明らかにしてきたような、自治体の経済活動に対する制約という契機のみならず、自治体事業の遂行に必要とされる費用調達や支出の方法に関する視点があることを明らかにした。その上で、わが国においても、自治体事業を通覧するための理論的視座が必要であるとの示唆を導いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度においては、国の担当部局や自治体担当者を対象者として、公私協働組織に関する実態を把握するためのヒアリングを実施する予定であった。しかしながら、①本研究課題の遂行するなかで、日独の公私協働組織の実態把握よりも、文献に基づいて法理論・法制度の詳細な比較研究を優先的に実施すべきとの認識に至ったこと、②交付申請書作成時には予想し得なかった他業務が発生し、ヒアリングのセッティング等に時間な十分を確保することができなかったこと、③新型コロナウイルスの蔓延の影響で、年度末にヒアリング調査を実施することができなかったことから、2019年度においては、理論面・法制度面における検討に注力した。 このように、ヒアリング調査の実施には遅れが生じているものの、法理論・法制度面からの検討や研究成果の公表は、申請時に想定していたよりも順調に進捗しており、本研究課題全体としては、やや遅れている現状である。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」において述べたように、本年度課題を遂行するなかで、申請者は、ヒアリング調査の実施よりも、法理論・法制度の比較法研究を優先的に進めるべきとの認識を得るに至った。 そこで、2020年度は、前年度に公表した研究成果を踏まえて、公私協働組織のガバナンスに関するドイツ法に関する申請者の研究業績の公表を行うことを主眼に、プロジェクトを遂行することとする。 具体的には、①当該年度の前半において、具体の各論政策領域における公私協働の展開に着目した論考を学術論文の形で公表するとともに、②当該年度の後半において、これまでの申請者の公私協働組織のガバナンスに関する日独比較法研究の成果を総合的にとりまとめた上で、学術研究図書として公刊する予定である。また、③上記作業の進捗、また、新型コロナウイルスの蔓延の状況にも目を配りながら、国や地方公共団体に対するヒアリング(計二回を想定)を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究課題を遂行するなかで、ヒアリング調査の実施より、法理論・法制度に関する日独比較研究を総合的に遂行し、この成果を2020年度に学術研究図書として公刊すべきとの認識に至ったため、次年度における出版費用を見越して、次年度使用額が生じた。2020年度においては、当該費用を今年度交付額と合わせて、学術研究図書の出版のための費用に充てる予定である。
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